アナタの忘れ物は夢ですか? 22

 家に着いて財布を取りに自室へ向かう。買いたい物もないからとある程度小遣いをためていた筈だが、ここ二三日で結構使ってしまってる気がする。財布の中身を一度確認してから、貯金箱から数枚札を取り出して財布に入れた。

「まぁこれくらいあれば、なんとかなるか」

 財布をポケットにしまい部屋から出ると、ちょうど幸も部屋から出てくるところだった。一通り目ぼしい所に行ったし、今日はどうするか、なんて話しながら階段を降りると、一旦飲み物を取りにキッチンへと向かう。

「私のバックに入れる?」

 そうしてくれると助かる、なんて言いつつ幸に飲み物を手渡した。じゃあ行こう、今日は幸を先頭に家から出ていった。玄関ドアを閉め鍵をかけると、強い日差しに思わず溜息がもれた。さて、と、どこ行こっか、俺を振り返りながら聞いてくる。

「そういえば、今夜どっかで花火大会あるとかなんとか」

 花火?! 俺の一言に目を輝かせる幸に、待ってろ少し調べる、とスマホを取り出した。ここらの地名と花火大会で検索すると、どうやら近くで花火大会があるらしい。じゃあ今夜は花火大会にでも行くか? スマホから顔を上げ聞くと、こくこくと首を縦に振っている。

「じゃあそれまで暇だし、あのショッピングモールにでも行くか」

 今からなら映画も間に合うだろ、なんて言いながら家の最寄り駅まで歩く。ガタゴトと揺れる車内で、映画の時間を調べていると、あと数十分後に映画が始まるようだった。最寄りからは少し歩くから多少急いだほうがいいかもしれない。電車が駅に着いたと同時に走り出す、一度振り返り幸がついてきているのを確認すると、さっさと改札を抜けて炎天下の下ショッピングモールへと向かった。

 ショッピングモールに着くと、エレベーターに乗り込み、映画館フロアの階数を押した。数人乗って数人おりていくのを繰り返してから、目的の階に着くと早速映画のチケットを二枚買った。荒くなった息を整えていると、後から幸がやって来た。

「ところで、今日は何見るの?」

 答え代わりに映画のチケットを手渡すと、俺からチケットへと目をやる。人気のアクションものの洋画だと気付くと、このシリーズ面白いもんね! とキラキラと目を輝かせた。

「じゃ、行くか」

 映画館のスタッフにチケットを渡し、言われた通りの番号まで来ると、扉を開けて中へと入っていく。暗い中光を頼りに階段を上り、スマホのライトで座席を確認して、もたついている幸に手招きした。幸が隣に座るのと、俺がスマホの電源を切ったのは殆ど一緒だ。本編の前の、これからやる映画の宣伝だったり、映画鑑賞のマナーだったりを見終わり、ようやく映画の本編が始まる。深く座席に腰掛け、映画の世界へと入っていく。

 映画を見終わり、幸と感想を言い合いながら、映画館フロアのロビーへと戻ってきた。ふとグッズが気になりグッズ売り場へ行くと、色々な映画のグッズが所せましと並べられている。パスケースだったりマグカップだったりと、日常使いしやすい雑貨から、フィギュアなんかまで一通り揃っている。一通りざっと眺めて、数個の雑貨を手に取った。

「お前はどうする?」

 まじまじとグッズを見ている幸に声をかけると、うーん、どれにしよう、なんてチラと俺を見た後また直ぐグッズへと目をやった。もう先に買っとくから、ゆっくり見とけ、会計を済ませる俺の直ぐ後ろに、何故か幸がいたかと思えば、映画のパンフレットを買っていた。

「まだ時間あるな、ゲーセンでも行く?」

 スマホの電源を入れ時間を確認すると、まだ予定の時間までかなりある。移動の時間を入れても一二時間は余裕があった。念のため幸に聞くと、お金大丈夫なら行こう! とニッコリと笑っている。映画のグッズ片手に、早速ゲーセンに向かった。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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