不思議図書館・追「3:急襲」

不思議図書館の建物の屋根に厨二的な決めポーズをしながら立つ、男…ノーヴ。

その隣にいる黒いウサギ耳の帽子を被った少女…スー。

「ハーッハッハッハ!!この図書館、そしてこの世界は俺様達のものになった!!」

「な、何やっているの、ノーヴ!?」

「言っただろうイミア、後悔するなと。俺様を裏切った罪は重い!」

「わけわからないこと言ってないで、降りてきなさい!図書館に迷惑かけないで!」

「ふーん、やはり俺様の予想通りだ。イミア!お前はこの図書館に通い詰めて、仕事を疎かにしていた!」

ビシッとイミアを指差して言うノーヴ。

「た、確かに図書館に来る頻度は多いけど…でもちゃんと仕事はしてるよ!」

「いや、俺様に会う頻度が明らかに減った!つまり仕事を疎かになっていた証拠だ!」

「単に会わなかっただけでしょ!?」

コントのようなやりとりをするイミアとノーヴの様子から、2人が知り合いという事は皆が理解した。しかし、こんな男がゼルルを倒して図書館を乗っ取ったのか?それとも隣のウサギ耳の帽子の少女の方が強いのだろうか?

「侮ってはいけませんわ…あの男、かなり強いですわよ…。」

ボロボロで満身創痍気味のゼルルが、むつぎに抱きかかえられながら言う。身体が魔導書グリモワールとはいえ、ゼルルも称号持ちの大悪魔。実力はあるからこそ、図書館を任せたのだ。そうでなければレフィールも、みるも、ゼルルひとりに図書館の留守番をさせることに異を唱えていただろう。

幸いにも、ノーヴという男はイミアに気を取られている。みるとレフィールは無言で互いを見て頷き、羽を出して左右から奇襲に迫った。

ギリギリまでベラベラとお喋りをしているノーヴに、レフィールは刀を振り下ろす。

…少し切り付けて吹き飛ばしてやれればいいと思っていたレフィール。

だが、刀は切り付けるどころかノーヴの身体にすら届いていなかった。

あんなに喋っていたノーヴの手には、いつの間にか槍があり、レフィールの刀を受け止めている。

「なっ…!?」

「ふーん、俺様が気付いていないとでも思ったか?」

レフィールはもう一度斬りかかるが、ノーヴの槍さばきを中々越えることができない。

「レフィ!?」

もう片方を抑えようとしていたみるは、レフィールに加勢しようとしたが、逆にウサギ耳の少女が行く手を遮る。

「ダメだよ、お前の相手はボクなんだから。逃がさない。」

ウサギ耳の少女は、付けている手袋から長めのかぎ爪を現し、みるに切りかかった。咄嗟に鎌を出して防ぐ、みる。

「あははっ!初めての戦闘がこうなるなんて…全然予想してなかったよ!みる!」

「何を言っているの…貴方は一体…」

「ボクは「スー」だよ。忘れたの?みる。ずーっと会いたかったよ、裏切り者の…みる。」

「スー…裏切り者って…!?」

「みるがボク達を…いや…ボクを裏切ったんだよ?まさかそれすら忘れたの?ボクはキミが大好きだったのに!!」

殴りつけるように爪で乱れ切りをする少女…スーに、みるは防ぐだけで手いっぱいだった。

これではレフィールの応援に行けない。

どうする!?

そう思っていた、みるの前に見知った影が飛び込み、スーの爪を受け止めた。

スーの血のような赤黒いかぎ爪ではない、猫の爪のように鋭い、魔力の爪。

「みる、行けっ!」

「サラミ…!」

サラミが後を受け継ぐと誓った夜に現れた力。それはサラミの手首でブレスレットになり、魔力の爪を出す武器だった。みるはサラミに無言で頷き、再び翼を羽ばたかせてレフィールの元へと向かう。

「…何だよオマエ。ボクを止める?はっ、何様のつもり?そもそも、みるの何なのさ。ペット?」

「みるはアタシをペットとして扱ったりしない。大事な「友達」だ。」

「お友達ごっこなら、ボクの前以外でやってくれないかなあ…ノラ猫がぁ!!」

スーの爪がサラミに振り下ろされるが、サラミはそれを受け流し、更にスーに自分の爪を振るう。スーもそれを受け流す。

…同じ頃。

サラミがみるの元へ向かった時、イミアもまた苦戦しているレフィールと、ノーヴの元へ向かう。

元々変な勘違いや決めつけをするノーヴだったが、とにかく争いなんてしたくない。

止めないと。過ちを犯す前に。それが友達の自分に出来る事。

イミアは胸元の薄緑色のハート形の宝石を手に唱える。

「力を貸して…【ミストルグラス】!」

宝石は大剣の形になり、イミアの手に収まった。

「やめなさい、ノーヴ!!」

ノーヴの槍をイミアの大剣が受け止める。

「イミア!?何だよその剣…!」

マンドレイクに貰った石から生まれたその大剣に、ノーヴも、言葉にしないが、みるとレフィールも驚いていた。

それもその筈、この大剣について知っているのはユリドール…ユリィだけ。そのユリィからイミアも内緒にしておくように言われていたのだ。

「フンッ、なるほどな。…おい、一旦引くぞ!」

ノーヴは槍を消し、サラミと戦闘中のスーに向かって言う。

「はあ?まだボクは…」

「目的は達成しただろうが。俺様に逆らう気か?」

「チッ…わかったよ。」

スーもサラミから離れ、2人は不思議図書館の扉の前に移動する。

「不思議図書館!俺様達2人を中に入れろ!他のヤツは絶対に中に入れるな!」

ノーヴが大きな声で言うと、図書館の扉が開き、ノーヴとスーだけを招くように風が吹き荒れた。

「じゃあな、イミア!今度はその大剣、叩き折ってやるよ。」

「みるも、次は覚悟しておくことだね!バイバーイ!」

「ちょっ…待っ……!」

一番近かった、みるが扉に手を伸ばすが、無情にも扉は2人以外の全てを拒むように、硬く閉じてしまう。

「そんな…どうして…ノーヴ!」

イミアが図書館の扉を叩くと、強い衝撃波が図書館から放出し、全員を吹き飛ばしてしまう。

…図書館の外、つまり「世界の外」へと。

「まずい…みる!」

「…もう!レフィ、後は任せたから!「トランス・ディメンション」!!」

咄嗟にレフィールがみるに呼びかけ、みるは巨大な魔法陣に全員が入るよう空中に展開して唱えた。

着いた先は、みるの自宅の前。

何とか放り出される心配は無くなったが、みるは急に大規模な転移をして気絶し、他の者は皆衝撃波のせいで気を失っている。唯一意識があって動けるのは、レフィールだけだった。

「…さて…面倒になったな。とりあえずはユリドールに連絡か。」

深い溜め息をついたレフィールは、さっさとユリィに連絡をつけて呼び出した。

終わる。or 関連本の追求。

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メルン

小説を書くのが好きな、アニメ・ゲーム・読書が趣味の人です! 目についたものや不思議なことを小説にしたり、絵にも挑戦したいです。 ほのぼの、ほんわか、ちょっと謎な話もあるかも…?

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