その後ゲーセンをうろうろし、外に出て閉店間際の衣料品店に顔をだして時間を潰した。
今は8時27分。
そろそろバーに行こうかと思い、目的の店に向かった。
「甘めで何かお勧めのウイスキーはありますか?」
「ショットでストレートでください。」
と、僕は言った。
「こちらはいかがでしょうか?」
と、店員は見たこともない銘柄のウイスキーを提案してきた。
「ではそれで。」
僕はそのウイスキーを胸が熱くなる感覚を味わいながら、今日起こった朝の悲劇を思い出しながら飲んだ。
「マスター。駅の構内に気になる人がいるんです。」
「でも、今日新事実が分かったのですが、その店員さん左手の薬指に指輪をしているんですよね。」
「なるほど。でも結婚しているかどうかまだ分かりませんよ。」
「最近じゃ、結婚指輪を防波堤にして男性からのアプローチを防ぐ狙いでわざと結婚していないのにつけている人もいるくらいですから。」
「なるほど!それは思いもよらなかった。あの人べっぴんさんだからそういうことするかもしれない。」
「お客さんも男前ですし、今度直接聞いてみてはどうですか?」
「そうですね。」
「まだ諦めるのは早いですよ。」
僕はバーを後にし、沈んでいた気持ちが少し上向きになった。
その後帰宅し、シャワーを浴びて寝た。
その6へ続く。