1か月前にふゆき君の初めてのお買い物は成功したが、僕はうなだれる様に落ち込んでいた。
なんでだよ・・・。なんでふゆき君は僕の所へ戻ってきちゃうのおおおー!!
家族に見つかって、そのまま病院に向かってもらえると思ってたのに・・・。
そして僕もだよ!ふゆき君を心配してた姿を見せたら更に家に帰りたがらないじゃん!!
「あおい、今日は肉買ってきたぞ!今夜はすき焼きだよ!」
「あっ・・・・・・うん。」
そうじゃない!!なんで僕の思惑通りにならないんだ!!
・・・・・・でもまあ、どこかで倒れることはなかったんだ。それだけでも良かったのかもしれない・・・。
「どうしたんだあおい?落ち込んでいるみたいだけど?」
「いや・・・、何でもないよ・・・、あは・・・あはははは。」
この本音をふゆき君にぶつけるわけには行かないので虚勢を張ることにした。
ふゆき君は僕の落ち込んでる姿を見て悟ったのかあまり深入りしてこなかった。
しばらくしてふゆき君は自分で作ったすき焼きを食べていた。僕は妖怪だからか、空腹にならないので眺めていた。
「・・・そういやあおいってご飯は食わねえのか?」
「いや・・・、僕はご飯を食べなくても生きていけるんだ。僕は幽霊みたいな存在でもある妖怪だからね・・・。」
人間として生きていたら食べれたかもしれない。でも妖怪(自分)は不老不死みたいな存在だからなのかあまり食べようとは思わなかった。
そんな考え事をしていたらふゆき君はすき焼きの具材をよそって「食べなよ」と渡してきた。
「遠慮しておくよ・・・。僕はふゆき君が元気に食べてくれるだけで充分だよ。」
「でも俺だけ食べているのは独り占めしているようで気が引けるし、それにただ眺めているだけで食べないのはもったいないから。」
ふゆき君の目には優しさが溢れていた。彼が本当に優しくなければこんな風に渡すことは無かっただろう・・・。
その好意を受け取って僕もすき焼きを食べた。
「美味しい・・・。こんな風に人と食べたのはいつ以来かな・・・?」
「だろ!他の人と一緒に食べないと毎日の幸せを感じることができないんだ!それに、俺の実家は食堂でな。思いっきり料理の技術を教えられたんだぜ。だから料理の腕前は人より自信があるんだ!」
食堂かあ・・・。
毎日ご飯が美味しいんだろうなあ・・・。
前にお赤飯や他の友達が持ってきたおにぎりとか食べたことあるけど、みんなお空に旅立って僕だけ残っちゃうことがあった・・・。
もしこうやって散っていった友達とふゆき君と一緒に食卓を囲んで、楽しく食べれたらなあ・・・。
「あおい・・・お前、どうした・・・?」
「えっ・・・?」
ふと我に返ったら涙を流していた。・・・僕は今、何が原因で悲しくなったんだ・・・?
「お前は余程寂しい人生を送ってきたんだな。あおいの過去にどんなことがあったのかは知らないけど、長生きしてたら色んな人が散っていくよな・・・。また美味しい物を作ってやるから、その時はまた一緒に食べようぜ!」
そっか・・・、毎日他の人といる事で気付けない事があったんだ・・・。
ありがとう・・・ふゆき君。大切な事を思い出させてくれて。
楽しくおしゃべりをして、すき焼きを完食したらいつもなら眠る必要がない僕でも寝る事ができた。
そんな楽しい毎日を送っていたら半月後にある人物が来客してきた。