いつも通りに庭用ほうきで庭の掃除をしていたら、見知らぬ女性がやってきた。
「うーん・・・?ここで見かけたとは聞いたけど・・・?」
その女性は何だか座敷童に会いに来た様子でもなかった・・・。人探しか?
「ふゆきー!どこにいるのおー!?」
ふゆき君!?もしかして、ふゆき君を知っている人か!?
生憎、僕の姿は見えていない!どうしよう!?このままふゆき君を呼びにいくか!?家族なのかどうか確認できるのはふゆき君しかいないし・・・。
「あおい、どうした?」
呼ぶかどうか迷ってる内にふゆき君が来た・・・。
「・・・っ!!姉貴!?」
えっ?姉貴?ってことは、家族!?
「ふゆき!今までどこに行っていたのよ!ボロボロの屋敷に人が住んでいるって聞いて、まさかと思って来てみたら・・・。どうして心配かける真似をするの!?」
「悪かったって姉貴・・・。でも俺は自分の家に帰りたくなかったんだ・・・。」
えっ?家に帰りたがらない理由は家出!?それで僕の所に来たのか・・・!
「駄目だよふゆき!あなたは癌を罹っているでしょう!!入院する日に自分の部屋からこっそり抜け出した時には凄く焦ったんだから!そんなことをしてたら治らないよ!!」
えっ?癌!?・・・どういう事!?今まで癌を隠して僕の所に来たの!?
「姉貴だって知ってるんだろう!!俺があと余命半年しかないってことを!!」
・・・えっ?・・・余命が半年!?
隣で聞いていた僕は色々な事柄が繋がり、青ざめていた・・・。
「だからといってこんなボロボロの家に住む病人がどこにいるのよ!!腕も癌で失っているのに!どうして勝手な真似をするのよ!?」
「こんな薄暗くて治療しながら管に繋がれるぐらいなら残りの人生ここで身を引いた方がマシだ!!それにここには座敷童だっているんだぞ!!」
「座敷童・・・!?あんた、そんなおとぎ話を信じてボロボロの屋敷に居座っていたの!?」
ふゆき君の姉さんはカンカンに怒っていた。流石にふゆき君の我儘に僕も黙っていられなかった。
「ふゆき君、もう帰った方がいいよ!君が弱っていく姿は見たくないよ・・・!」
「大丈夫だってあおい!俺はまだ・・・まだ・・・!」
「馬鹿なことを言ってないで家に帰るわよ!!座敷童なんていないんだから!!」
ふゆき君のお姉さんは心配を超えた怒りでふゆき君の手を強引に引っ張った。
「やめてくれ!姉貴はいつだってそうだ!!俺の好きな妖怪の話を否定しやがって!!座敷童は本当にいるんだ!!否定するのは許さない!!それに最期は好きな場所で眠りたいんだ!!」
ふゆき君は子供の様に駄々をこね、その様子にあ然とした姉さんの手を強引に振りほどいた。
僕もふゆき君の様子に呆れていた。
「勝手にしなさいよ・・・。あんたがそこまでここで余生を過ごすというのなら、好きにすればいいわ!!じゃあね!もう弟とも思わないから!!」
ふゆき君の姉さんは涙を流しながら怒って帰っていった。
でも怒っていたのはふゆき君の姉さんだけじゃない。僕も苛立ちを感じた。
「どうして帰らせたの・・・?それにどうしてそんな事を今まで黙っていたの?」
「えっ?・・・ああーっ、まあ・・・全部話さなきゃいけないか・・・ははっ・・・。」
僕は疑問に思ったことを全てふゆき君にぶつけた。