ふゆき君が家に帰りたがらない理由、持病の件、僕の屋敷に向かった経緯を居間で全て白状してもらった。
ふゆき君は癌の進行が命に関わる程進んでおり、延命治療を勧められた。だけど入院して寝たきりになるのが怖くて怯えていた。入院生活を拒否して親に鬼の形相で怒鳴られた事もあった。そんな中、小さい頃から読んでいた座敷童という妖怪についての本に魅入られて入院2日前に自宅から逃げ出し、座敷童がいるかどうか確かめる為に向かったとのことだった。
座敷童の僕に会うという夢を叶えたいと思い、家族に黙って座敷童の・・・僕の家へ向かったと・・・。
全てを聞かせてもらった。まさかここまで重い持病だったとは思わなかった。
最後の質問をふゆき君にぶちまけるようにあてた。
「どうして今までの事を全て黙っていたの・・・?」
「うーーん?どうしてか・・・。」
「当たり前だよ!!前に言ったよね!?血でも吐いたりしたらこの家から出て行ってもらうって!それなのに動かなくなりそうな身体で僕の所に来るなんて我儘にも程があるよ!!」
僕は大粒の涙を流しながらふゆき君を怒鳴った。ふゆき君も自分の病気を黙っていたことを悔いていた・・・。
「悪かったって・・・・・・。真実を言ったら本当に追い出されると思っていたからさ。・・・それでもお前との時間を天国に行く前に一度作りたかったんだよ・・・。」
僕は怒りの感情を超えたせいか、静かに黙るしかなかった。
その深夜、ふゆき君が寝ている部屋で、あることを実行した。
それはふゆき君を僕の力で家まで送り出すこと。ふゆき君が寝てる間に霧を発生させて自分の部屋まで送ることができる妖力だ。
そしてふゆき君には僕の妖力で今まで一緒にいた記憶を消す。それが僕のできることだった。
ふゆき君には自分の意志とは関係なく記憶を消すのは心が痛むが、ここまでしておかないと戻ってくる可能性はある。
きちんと病院で治療してもらって、元気になってほしい。そう願って妖力で霧を作った。 そして霧が濃くなり、寝ているふゆき君を家まで送り届けた。
「ごめんね・・・ふゆき君。」
力を使った僕は思い出にふけって天井を見つめた・・・。
1か月が経って静かな生活に戻った。