「ごめんなさい…。」
夢の中、みるは知らない声と姿を見た。薄い水色の髪に白いウサギの耳と尻尾が付いた、女の子だ。
「ごめんなさい!みる!私がスーを止められなかったばかりに…!でも、スーを責めないでください!スーは・・・・に・・・・・・・・!」
最後の部分だけ、何故か聞こえない。それに女の子も気付いたらしい。
「やっぱり・・・・の力が強いのですね。みる、どうかスーを止めてください!あんなやり方は間違っています!私も何とか、スーや・・・・に干渉出来るように頑張りますから…。」
必死になって訴える女の子。だがその姿が次第に遠くなる。
(待って!貴女は誰!?スー達の目的は何!?何で私を知っているの!?)
みるの声は届かず、それでも手を伸ばす、みる。
・
「待って!」
ガシッとその手で掴んだのは、ゼルルの尻尾だった。
【ぎゃあああ!!何をするんですのー!!!】
「え?…あ…夢…?」
【早く離してくださいまし!!いたたたた!!】
「うわぁ!?ご、ごめん、ゼルル!」
ジタバタするゼルルの尻尾を慌てて離す、みる。よくよく見れば、そこはベッドの上。しかもレフィール用の部屋のベッドだった。
「あー…私、確か自宅に大人数転移して気絶したんだ。」
【そうですわ。その後、魔女幽霊が来てワタクシや貴女を部屋分けして寝かせましたの。客用寝室にイミアと猫、リビングにお兄さまとワタクシ、貴女は…自室では何かと出入りされると不安だろう、とレフィールの部屋ですわ。…何であんな見た目小さい家が、こんなに広いんですのよ!】
「そんなに広くないよ?2階は私の寝室と勉強部屋しかないし。」
【地下がある家は広いですわよっ!!…さっさとリビングに行きましょう、貴女が目覚めの最後ですわよ。】
大人しくゼルルの後をついていく、みる。そこでふと思ったことをゼルルに聞いてみた。
「何でゼルルが私を見ていてくれたの?むつぎは?」
【お兄さまは、不思議図書館司書の契約を魔女幽霊とレフィールと、書き換え中ですわ。当分図書館に戻れないと想定をしているので。】
みるはそれを聞いて納得する。あの[yabame]Tシャツの男…ノーヴがどこまで権利を奪っているのかわからないが、不思議図書館をあれだけ操作できる上、レフィールと互角に戦える実力者だ。長期戦を見越しておくのは妥当だろう。
リビングに入ると、既にむつぎの契約書き換えは終わったらしく、全員がみるを待っている状態だった。
「ミィ!…身体はどうだ?どこかに異常はないか?」
「大丈夫だよ、ありがとう、レフィ。…それから、師匠も。」
「まぁ…全員軽傷で済んで良かったわ。」
それからは全員で情報交換と、これからのことを話すことになる。
ノーヴは速達屋のバイトで、イミアの友達、でも詳しい素性はわからない。
黒いウサギの女の子…スーは誰も知る者がいない。
そして…ユリィ曰く、不思議図書館の管理者権限が無くなったらしい。
「ついさっき…いや、ちょっと前にカルムに確認に行ったばかりなのに!」
「だから、まずは元の管理者の所に行こうと思ってな。」
「元の管理者…レインの所?」
レインはカルムの弟で、魔術師としては弟弟子にもなる。
「あと、この悪魔2人は私の家…みるとイミアが修業した家にしばらく居てもらうわ。」
「それなら、あたし達も行きやすいですね!」
そう聞いて、むつぎは思う。
(このまま、みるの家の居候じゃないのか…。そもそも、客用寝室はともかくレフィールの専用部屋があるということは…まさか2人は…。)
「このまま居てもケンカになるだけだろう?特にレフィールとむつぎ。」
「そうだな、こちらとしてもそうしてくれた方が助かる。」
(サラミが知っている!?…いや、そうだな、みるの修業後から上がりこんでいたんだから、当たり前か…。しかしやはり2人は…同じ屋根の下で…)
「2人だけの時でも、家が半壊することがあるからな。」
「えっ。」
「それは~レフィが全力で来いとか言うから~!」
「そうでないと、つまらんだろう。あとはお前を無理矢理起こすと色々飛んできて半壊するしな。」
どうやらレフィールによると、みるは家では、ものすごーく寝起きが悪いらしい。無理に起こそうとすると何かの魔法が飛んで来るようだ。これ以上の揉め事の種は増やさない方が(家の修理の手前を考えると)いい、というのが居候ではない理由らしい。
「じゃあ、私と悪魔2人は引越し作業。みるとレフィールはレインのところに。…あとカルムにも伝えて。イミアとサラミは速達屋でノーヴの情報収集をしてもらえる?」
「はーい。」「りょーかい。」「えーカルムんとこも行くの~?」
「つべこべ言わず、行動しなさい!」
「「はーい。」」
ユリィ先導の元、役割分担を決め、全員が行動を開始することになった。
・
・
一方その頃、不思議図書館内では、ノーヴとスーが本を漁っていた。ノーヴは地球の日本の漫画、スーは魔導書を中心にして読んでいる。
「ふーん、流石地球の日本!この俺様にぴったりの本ばかりで飽きないな!」
「マンガ本ばかり読んでて、説得力無いんだけど。」
「仕方ないだろう?どれも長くて、まだ完結していないんだ。」
「じゃあ、こっちの薄い本にしたら?」
「フン、本家以外に興味は無い。」
「あっそ。何でもいいけど、ボクのジャマはしないでよ。」
「する訳があるか。」
そう言って新しい漫画に手を出すノーヴ。スーもまた本を読むことに集中し始めた。
・
そんな不思議図書館内の様子をどこかから見る、白いウサギ耳の女の子。
(あれはあれで…一応被害は無い…ということでいいのでしょうか…?本はあちらこちらに散乱していますが…。それにしても…スー!薄い本はダメです~!!)
あわあわしたり顔を真っ赤にしたり、見ているだけなのに随分忙しそうな女の子だった。
終わる。or 関連本の追求。