不思議図書館・追「4:これからの会議」

「ごめんなさい…。」

夢の中、みるは知らない声と姿を見た。薄い水色の髪に白いウサギの耳と尻尾が付いた、女の子だ。

「ごめんなさい!みる!私がスーを止められなかったばかりに…!でも、スーを責めないでください!スーは・・・・に・・・・・・・・!」

最後の部分だけ、何故か聞こえない。それに女の子も気付いたらしい。

「やっぱり・・・・の力が強いのですね。みる、どうかスーを止めてください!あんなやり方は間違っています!私も何とか、スーや・・・・に干渉出来るように頑張りますから…。」

必死になって訴える女の子。だがその姿が次第に遠くなる。

(待って!貴女は誰!?スー達の目的は何!?何で私を知っているの!?)

みるの声は届かず、それでも手を伸ばす、みる。

「待って!」

ガシッとその手で掴んだのは、ゼルルの尻尾だった。

【ぎゃあああ!!何をするんですのー!!!】

「え?…あ…夢…?」

【早く離してくださいまし!!いたたたた!!】

「うわぁ!?ご、ごめん、ゼルル!」

ジタバタするゼルルの尻尾を慌てて離す、みる。よくよく見れば、そこはベッドの上。しかもレフィール用の部屋のベッドだった。

「あー…私、確か自宅に大人数転移して気絶したんだ。」

【そうですわ。その後、魔女幽霊が来てワタクシや貴女を部屋分けして寝かせましたの。客用寝室にイミアと猫、リビングにお兄さまとワタクシ、貴女は…自室では何かと出入りされると不安だろう、とレフィールの部屋ですわ。…何であんな見た目小さい家が、こんなに広いんですのよ!】

「そんなに広くないよ?2階は私の寝室と勉強部屋しかないし。」

【地下がある家は広いですわよっ!!…さっさとリビングに行きましょう、貴女が目覚めの最後ですわよ。】

大人しくゼルルの後をついていく、みる。そこでふと思ったことをゼルルに聞いてみた。

「何でゼルルが私を見ていてくれたの?むつぎは?」

【お兄さまは、不思議図書館司書の契約を魔女幽霊とレフィールと、書き換え中ですわ。当分図書館に戻れないと想定をしているので。】

みるはそれを聞いて納得する。あの[yabame]Tシャツの男…ノーヴがどこまで権利を奪っているのかわからないが、不思議図書館をあれだけ操作できる上、レフィールと互角に戦える実力者だ。長期戦を見越しておくのは妥当だろう。

リビングに入ると、既にむつぎの契約書き換えは終わったらしく、全員がみるを待っている状態だった。

「ミィ!…身体はどうだ?どこかに異常はないか?」

「大丈夫だよ、ありがとう、レフィ。…それから、師匠も。」

「まぁ…全員軽傷で済んで良かったわ。」

それからは全員で情報交換と、これからのことを話すことになる。

ノーヴは速達屋のバイトで、イミアの友達、でも詳しい素性はわからない。

黒いウサギの女の子…スーは誰も知る者がいない。

そして…ユリィ曰く、不思議図書館の管理者権限が無くなったらしい。

「ついさっき…いや、ちょっと前にカルムに確認に行ったばかりなのに!」

「だから、まずは元の管理者の所に行こうと思ってな。」

「元の管理者…レインの所?」

レインはカルムの弟で、魔術師としては弟弟子にもなる。

「あと、この悪魔2人は私の家…みるとイミアが修業した家にしばらく居てもらうわ。」

「それなら、あたし達も行きやすいですね!」

そう聞いて、むつぎは思う。

(このまま、みるの家の居候じゃないのか…。そもそも、客用寝室はともかくレフィールの専用部屋があるということは…まさか2人は…。)

「このまま居てもケンカになるだけだろう?特にレフィールとむつぎ。」

「そうだな、こちらとしてもそうしてくれた方が助かる。」

(サラミが知っている!?…いや、そうだな、みるの修業後から上がりこんでいたんだから、当たり前か…。しかしやはり2人は…同じ屋根の下で…)

「2人だけの時でも、家が半壊することがあるからな。」

「えっ。」

「それは~レフィが全力で来いとか言うから~!」

「そうでないと、つまらんだろう。あとはお前を無理矢理起こすと色々飛んできて半壊するしな。」

どうやらレフィールによると、みるは家では、ものすごーく寝起きが悪いらしい。無理に起こそうとすると何かの魔法が飛んで来るようだ。これ以上の揉め事の種は増やさない方が(家の修理の手前を考えると)いい、というのが居候ではない理由らしい。

「じゃあ、私と悪魔2人は引越し作業。みるとレフィールはレインのところに。…あとカルムにも伝えて。イミアとサラミは速達屋でノーヴの情報収集をしてもらえる?」

「はーい。」「りょーかい。」「えーカルムんとこも行くの~?」

「つべこべ言わず、行動しなさい!」

「「はーい。」」

ユリィ先導の元、役割分担を決め、全員が行動を開始することになった。

一方その頃、不思議図書館内では、ノーヴとスーが本を漁っていた。ノーヴは地球の日本の漫画、スーは魔導書を中心にして読んでいる。

「ふーん、流石地球の日本!この俺様にぴったりの本ばかりで飽きないな!」

「マンガ本ばかり読んでて、説得力無いんだけど。」

「仕方ないだろう?どれも長くて、まだ完結していないんだ。」

「じゃあ、こっちの薄い本にしたら?」

「フン、本家以外に興味は無い。」

「あっそ。何でもいいけど、ボクのジャマはしないでよ。」

「する訳があるか。」

そう言って新しい漫画に手を出すノーヴ。スーもまた本を読むことに集中し始めた。

そんな不思議図書館内の様子をどこかから見る、白いウサギ耳の女の子。

(あれはあれで…一応被害は無い…ということでいいのでしょうか…?本はあちらこちらに散乱していますが…。それにしても…スー!薄い本はダメです~!!)

あわあわしたり顔を真っ赤にしたり、見ているだけなのに随分忙しそうな女の子だった。

終わる。or 関連本の追求。

  • 10
  • 0
  • 0

おすすめのタグ

メルン

小説を書くのが好きな、アニメ・ゲーム・読書が趣味の人です! 目についたものや不思議なことを小説にしたり、絵にも挑戦したいです。 ほのぼの、ほんわか、ちょっと謎な話もあるかも…?

作者のページを見る

寄付について

「novalue」は、‟一人ひとりが自分らしく働ける社会”の実現を目指す、
就労継続支援B型事業所manabyCREATORSが運営するWebメディアです。

当メディアの運営は、活動に賛同してくださる寄付者様の協賛によって成り立っており、
広告記事の掲載先をお探しの企業様や寄付者様を随時、募集しております。

寄付についてのご案内