特に目ぼしい情報も無く、その日は解散となった。
ー…夜。
ユリドール…ユリィは不思議な気配を察知して、みるの家の前までやって来た。
いつもより警戒しているというのもあるが、今の「神霊」状態だからこそ感じた…と思う事もある。
ユリィは辺りを見回した。どうやら、みるやレフィールから察知したものではないらしい。
…その時。
ぴょこっ。とどこからか姿を現したのは、イミアを助けた、あのマンドレイク。ユリィの姿を見つけるなり頭の双葉をぴこぴこ揺らしながら、どこかへ行こうとするが、ユリィを振り返って様子を見ている。
(もしかして…私を誘導している?)
ユリィが警戒しながらもマンドレイクに近づくと、マンドレイクはまた歩き出し、ユリィを振り返って止まった。
(やっぱり、私をどこかに連れて行きたいようね。)
そこら辺の知らない精霊や妖精なら誘いに乗らないが、相手があのマンドレイクなら何かあるかも知れない。ユリィはそう判断してマンドレイクに付いて行った。
マンドレイクが連れて来たのは、精霊の庭。
様々な姿形の精霊や妖精達が、楽しく穏やかに過ごしている。その中をマンドレイクは更に奥へと誘う。
「キレイなお姉さん、マンドレイクちゃんの知り合い?」
パタパタと飛んできた白いふわふわの女の子妖精が話しかけてきた。
「ええ、知り合いよ。」
「そうなんだー。」
「ちょっとユキちゃん!早くー!」
「あ、待ってよー!」
女の子は似たような格好の妖精達の元へと飛んでいく。ユリィは少し微笑んでからマンドレイクを追った。
ようやくマンドレイクが止まった場所は、ふわふわの芝生がいっぱいの草原。その中心には大きな綿毛の植物があり、様々な精霊達が寝転んでいる。
マンドレイクが綿毛に近寄ると、やはり少女の姿をした精霊がやってきた。
「マンドレイクちゃん、いらっしゃい!…あ、この人が?」
マンドレイクはウンウンと頷き、そのまま綿毛の中に飛び込んでいってしまう。
「はいはーい、おやすみなさーい。えっと、マンドレイクちゃんが連れて来たお姉さん、これをどうぞ。」
少女が差し出したのは…葉っぱ。
「ひと口かじって飲み込んでね。苦くはないよ?」
なぜ葉っぱを食べなければならないのか…と思うユリィだが、ここは精霊の庭。精霊達の世界。その世界にはその世界の決まりがある。それにユリィはどうせ死にはしない。
(これに意味があるのなら…!)
ユリィは言われた通り、葉っぱをかじって飲み込んだ。苦味や臭みは無い。スーッと涼やかな何かが通る感覚があった…と思った次の瞬間には、ユリィはパタリと倒れ込み、意識を失っていた。眠った、と言った方が正しいかも知れない。
「特別サービスなんだからね?「エーナ」ちゃん。」
・
・
ハッ、とユリィが気がつくと、そこは暗闇だった。
「…みんな…ありがとうございます…!」
暗闇に白いウサギの耳と尻尾を付けた少女の姿が現れる。
「初めまして、ユリドール様…いいえ、ユメリィ様。」
「!?…どうしてその名前を…それは…」
「はい、みるとレフィール様しか知りません。それを私が知るのは…私が「仕え魔になりかけた精霊」だからです。」
「仕え魔に…なりかけた?」
「はい。私は、かつて双子の妹と共に、ある者の仕え魔になろうとしました。しかし、その時に問題が発生して、妹はその者を恨み、私は妹に力を奪われて、囚われてしまいました…。」
「貴女は…一体…。」
白いウサギの少女は、どこかユリィの知る者に似た意思の強い表情で言った。
「私は「エーナ」。「スー」の双子の姉で、かつて…みるの仕え魔になろうとした精霊です。」
終わる。or 関連本の追求。
(※精霊と妖精は似たような存在と思ってもらって大丈夫です。妖精の方が、やや悪戯っ子な感じ。)