…太古の時代、世界に外からやって来た種族がいた。
天(そら)を飛ぶ翼と強大な魔力があり「天の使い」=「天使」と呼ばれた。天使は人種(人間)と交わる事でその力を受け継ぐ「混血」を生み出したが、混血は魔力を持つのみで翼が無く、やがて天使は人間に混じって現れなくなった。
当時、天使が人種を大量に虐殺するのは禁忌とされており、破った天使は翼が黒くなり「堕ちた天の使い」=「堕天使(堕天)」となり、天使から外され蔑まれた。その堕天使が恨みから生み出したのがモンスター(魔獣)である。もちろん堕天使も歴史と共に現れなくなり、モンスターのみが絶滅することはなく繁栄した。
何百年に1度稀に先祖返りとして天使が生まれることが発覚した後、人間は徹底的に天使を捕まえて、その力を未来永劫維持しようと実験をした。
先祖返りとなり、最後の天使として生まれたのが、レフィールの母だった。母は人間によって非人道的な行為を繰り返され、研究者達を大量虐殺して堕天使となった。そんな母が最後に生み落としたのが、レフィール。レフィールは堕天使になった母と研究者の人間の父との混血で、人間達はレフィールを飼い殺そうと考えていた…
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「…というのが、オレの世界での「堕天、天使、その混血」の末とオレの過去だな。」
図書館のテラスで話を聞いていた、むつぎ、イミア、サラミは微妙な表情をし、みるとユリィは、とても落ち着いた表情(でもあまり良い雰囲気ではない)をしている。
「レフィールさん…お母さんもですが…お父さんは…。」
「聞きたいか?父は当然、人間で天使の研究者。それはもう母や他の天使に…」
「いや!いいですっ!ごめんなさい!!」
涙目になって頭を下げるイミア。もちろんその続きを知っている、みるとユリィは更に微妙な雰囲気になっていた。
「まぁ…オレは、最も堕天使(天使)に近い混血、らしかったようだ。もっと実験がしたかったらしいが、最後の血を簡単に絶やす訳にはいかず…戦闘兵器まがいな扱いをしていたところに、ミィが現れてしまったというワケだ。」
「ひええ…」
ほぼ最強、みるに匹敵する実力者のレフィールの、壮絶な過去を知ってさらにテラスの空気は冷えていっている気がする。
「…まぁ…レフィールさんが暴挙に走る前に、みるが世界の人達を救ってくれたしねっ?」
「は?あの世界の人を救うとか思ってなかったよ?」
「…ん?」
「私はレフィを救いたかったんだよ?他の人とか…ましてやそんな非人道的なことをする人間とか救いたくないよ。…もし、レフィがガチの堕天使か天使になって、本気で自分と私の事を思って世界を滅ぼそうとしていたら、私は協力していたと思う。」
何の躊躇いも無く、みるはそう言ってイチゴ味の紅茶をすすった。
「そうしていたら、私も助かっていなかったわね~。」
のほほんとして言うユリィに、みるとレフィールも頷く。他の者は何も言えなかった。
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やがて重い空気に耐えられなくなり、解散となったテラスには、みるとレフィールとユリィだけが残る。
「みる。」
「ん?」
「他の人間を救わないなんて噓でしょ?」
「まぁ…できるなら両方とも救うのが私の信念だからね。でも、噓じゃないよ?全ての世界を天秤にかけても、私はレフィを選ぶもん。」
「はぁ、貴女もよっぽどね。」
スッパリそう告げる、みるに、ユリィは心底呆れていた。
また、それをレフィールに録音されていることも知らずに話していることにも、ユリィはただ呆れるだけだった。
終わり。
(※追をお待ちの読者様、もう少しお待ちください!(土下座) byメルン)