【おとぎ話の曲名が答え】
とても、ざっくりとした内容だ。
僕たちは楽譜をよく読んでみる。
でも、僕にはピアノなんて弾けないし楽譜さえ読めない。
音楽のジャンルは絶望的だ。
「……まいったな」
「あの、もしかしてこの譜面。全てある曲のサビの部分だとおもいます」
「本当に!?」
まりあは読めたらしい、だが問題はどれを演奏するかだ。
影斗さんはピアノをじっと睨みつけている。
「僕……ピアノ弾けない」
「任せてください。正解がわかりました。答えはこの楽譜です」
すると、まりあはイスに座り右側に置いてある楽譜を取り、鍵盤に向かって集中し始める。
深呼吸しているようだ、絵になる。
「すーっ……いきますね」
まりあが弾くピアノの音色はうっとりするほどおだやかだった。
僕はどんな曲名なのかはわからないけれど、その音色のとりこになってしまう。
演奏が終わり、まりあがお辞儀をすると僕はいつの間にか拍手していた。
「すごいね!とても素敵な演奏だったよ」
「ありがとうございます。わたしができるのはこれくらいなので」
「それで……いったい何を弾いていたんだい?」
「今弾いたのは、【こんぺいとうの踊り】です」
『くるみ割り人形か。俺には不協和音に聞こえたがな……』
まりあは楽譜を見て答える。
「正解は二番です。残りは【エリーゼのために】と【運命】ですわ」
「うわっ……どれも悲しい曲ばかりだな」
名前だけは知っていて、音楽の授業で聴いたことがある。
そして楽譜の最後には四桁の数字が記されていた。
[2 5 9 8]
赤い文字が不気味に見えてきた。
残りの二枚(【エリーゼのために】、【運命】)を見てみると、四ケタの数字は書いていなかった。
まりあは、それを見て僕に教える。
「2598ですね、この番号かと」
「ありがとう。よし……この数字を入れてみよう」
僕はロック式錠の白い枠に先ほどの数字にあわせてスライドする。
ガチャ!
「やった!これでここから出られるぞ」
「よかった……」
「まりあちゃんのおかげだよ。ありがとう」
「タツキさんもですよ、あなたはわたしの命の恩人です」
まりあが僕をほめごろし、照れを隠せずにはいられなかった。
影斗さんがやれやれ、とあきれ顔に。
「これで終わりかな?」
『いや、まだ残っている生徒がいるはずだ』
だとしたら次の場所へと向かうためにここを出るしかない。
だけど僕は少し気になったことがあり、まりあに質問する。
「そういえば君の他にも行方不明になった生徒を知っているかな?」
「いいえ、わたしにも分からなくて。お役にたてず……すみません」
「気にしないで」
また振り出しに戻った僕たちは音楽室を後にした。