確かに僕は旧校舎の中に閉じ込められた。
『タツキのような【理解者】はいなかった。あの時、旧校舎に迷い込んだヤツを少し驚かせてやろうかとでも思ったが……万里の言う通りだ』
(……⁉ だからあの時、クラスのみんなが移動教室の時に嫌な顔をしていたのか……)
その時間になるとクラスメートの半分が顔を青ざめていたのを思い出す。
かすかな記憶だったが、僕は彼らの話を、小耳にはさんでいた。
「おい、なんだか強い視線を感じないか?」
「泣き声が聞こえない? やっぱり旧校舎って怖いね」
「うん。特に音楽室と図書室は不気味だよね。あーあ、はやく新校舎できないかなー」
僕はあまり気にしていなかったけど。
(他に怪談ができそう)
「幽霊じゃなくてよかった……」
『あ? それは俺らのような怪物でも同じこと言えるのかよ?』
万里が今にも僕に殴りかかる勢いだったが、まりあがそれを止める。
「そんな事は思ってないよ! でも体験した他の子の気持ちは分かるよ……」
『タツキさん……』
最初、僕は行方不明になった生徒がいると聞いてよし助けるぞ、とやる気満々で行動したが結局だまされて努力はすべて水の泡となった。
だけど、こうして自分は無事に脱出して今はここにいる。
学院に平穏が戻ったと考えれば良しとしよう。
別に後悔はしていない。
「それより。君たちが僕のところに同居するって聞いたときは驚いたよ」
『タツキの事がどうしても、ほおっておけなくてな』
『あなたと一緒にいる方がもっと寂しくならないから』
まりあと万里は助けてほしいと僕に願ったからまだ分かるけど。
影斗に関しては僕をだまして、馬鹿にしていたことも覚えている。
「あのさ、僕はまだ君に心を許したつもりはないぞ」
『残念ながら、俺は幽霊だとは一言も言っていない。気づかなかったお前が悪いだろう』
「う……それは」
顔を赤面し、それ以上言い返す言葉が出てこなくなり僕はベッドに横になる。
三人は僕の顔を見て面白おかしく笑っていた。
「なんなんだよーっ……!」