注意
この章から薬物、暴力描写などがありますが、使用を容認するものではありません。
あの面倒な一件から数日が経ち、依頼が全くない、ある意味「休日」といった感じの日が2日続いた。
二週間ぶっ通しで仕事する事がざらなMにとって仕事する事に対して特に苦痛はないが、彼女には趣味と言えるものが無いので、暇でしかない休日は苦痛でしかなかった。
家にいるから退屈なのでは?と思う人もいるかもしれないが、特に名前を明かしていないから身元がバレにくいとはいえ、非合法な仕事ばかりしているMにとって警察は一番嫌いなものだ。
車が爆破された後だから、なおさらだ。
自身のスルースキルが高いとはいえ、会いたくないと強く思う。
暇つぶしになるだろうと思ってやった愛車と「なってしまった」ギブリの洗車も昨日に終えてしまい、本当にすることがない。
TVをなんとなく付けてみるが、内容は普段と変わらず、環境保護団体の特集、殺人事件のニュース、胡散臭い通販番組などつまらないものばかりだ。
「…はぁ…」
すぐ依頼が来ても大丈夫なように着ているワイシャツの着崩れなんてどうでもいいやと言わんばかりにリビングのソファに横になる。
「まじでなんか一つぐらい趣味作るか…」
何もすることがなく、虚無になってるMはそう呟いた。
プルルルル…
近くにあるテーブルに置いていたスマホの着信音が鳴り、寝転がりながらスマホの画面を眺める。
着信の相手はエルヴィーラからだった。
Mはめんどくさげに電話を取り、嫌そうに応対する。
「…はい」
「やっほー!元気にしてたー?」
「…切るぞ」
「…えっ?…ちょ…まって!!!なんで切ろうとするのよ?!」
「そりゃあ、お前だから」
「何その理由っ!!!?意味わかんないんだけど?!」
エルヴィーラはMのだるそうな対応に半ギレ気味にそう返す。
「…んで、なんだよ」
「なんだよって…!…ああ…ごめん。取り乱しちゃったわ…。あなたに依頼をしたくて電話したのよ」
「依頼?なんの依頼だよ」
「人運びよ。もちろん、生きた人よ。ただの女」
「は?そんなの私じゃなくてタクシーに頼めよ…」
「タクシーを頼めないからこうしてあなたにお願いしてるんじゃない」
Mの返答にエルヴィーラはそう返すと、続けて相手がいる場所と目的地を説明し電話を切る。
彼女はエルヴィーラの言っていた「ただの女」というワードに疑問を感じた。
普通ならタクシーを呼べば済む話だが、なぜか呼ばず、私に連絡をしてくる。
ということは、「面倒な客」ということだ。
それは、車を走らせて10分程のエルヴィーラが目的地と言っていたコンビニで知ることになった
「…。(うそだろ…)」
「あー!折れたー!あんたにぶつかったから折れたー!」
「…。いい加減帰ってくれよ…。他の客の迷惑になってるだろうが…」
Mは仕方なくエルヴィーラの依頼を受け、目的地のコンビニにたどり着いたが、コンビニ内で繰り広げられているわけわからない光景を見て彼女は車から出ようとしなかった。
コンビニ内で起きていることは、女性が左腕を抑えながら大げさな感じで「骨が折れたから何かしろ」と騒いでいる様子だ。
Mは直観であれがエルヴィーラの依頼の「面倒な客」だと分かった。
彼女の中で、犯罪歴があってなどの面倒な客はまだ許せるが、「あのタイプ」の面倒な客は自由奔放過ぎる為、平気で予定を崩そうとする一番面倒で苦手なタイプだ。
Mはこの場から立ち去ろうと考えるが、このまま逃げて戻った後エルヴィーラに馬鹿にされるよりはマシだ…と自分に無理やり言い聞かせ、車を降りコンビニへと入る。
「…あーっと…すまねぇ、私の知り合いが迷惑かけちまったな…」
「あ?お前の知り合いなのか?ならさっさと連れてってくれよ…」
「悪いな…。ほら、立てって…」
Mは店主にそう言われながら、「面倒な客」と彼女の近くにあったバックを引き摺るようにして店の外へと出した。
それと同時に、彼女のあるところを見て更に「面倒な客」という意味を理解した。
最初はアル中かと思ったが、酒の臭いは一切せず、別のにおいが強くしていた。
それは「大麻」だ。普通の人ならよくわからない臭いで終わるが、Mからしたら吸わないが依頼でたまに出てくる為、すぐなんの臭いか分かった。
Mの脳内で「ヤク中」は一番めんどくさい部類に入るため、彼女は舌打ちをした。
solitario: chapter2.Ridiculous drug addict「7.difficult customer」
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