「わたしだよ、セイラ!エマちゃんよく
星のつくステキな名前って笑顔で褒めてくれたんだよ?
それも…忘れちゃった……の?」
「ごめん…なさい」
エマは友達の必死さが伝わったのか申し訳なさそうに俯く
友達は堪えていた涙を流し走り去っていく
「ひどい……ひどいよ!」
その子はエマの事を責めずに叩かずに
1人で行ってしまった。
玄関先には、エマの事を心配して
持ってきてくれたであろうプリントがキレイに纏めてあった。
「エマは、ステキな友達をもったな」
1人になったエマをそっと抱きしめ
優しく包みこむ
「思い出せない私が悪いの?」
「誰も悪くない…」
セイラという子も、エマも悪くない
時間をかけてゆっくり思い出していこう
この時の俺は我が子に
何か言葉をかける必要があったかもしれない
何をかけていいのかわからなかった。
————————–
「エマちゃん家は…確か…」
クラスメイトがエマちゃん家に行ったことを知り
私は後を追った。
「どこに……いったの…」
息を切らしてながら走っていくと
公園で1人佇んでいる子どもがいた。
後ろ姿と私服を見て捜しているクラスメイトだと
確信した私はそっと近づく
「セイラさん?」
「……ユメ…ノ先生」
泣きながらこっちを振り向くセイラさんは
言葉が涙と必死さで途切れていく
「わたし…わた……しもわかるの…………パパを………
目の前で……………亡くしてるからっ…………
でも……セイラのこと……憶えてないのは……かなしい…
かなぢいよ………エマ……ちゃんは悪くないけど
憶えていて………ほしかった」
「きっと、エマさんも忘れたくてセイラさんのこと
忘れたんじゃないと思うの。目の前でお父さんを失ったこと
があるあなただからエマさんの悲しみがわかるのよね…
今はそっとしておきましょう?」
2日ぶりに友達に会いたいと思う気持ち
その友達が目の前で家族を失って
気持ちがフラッシュバックした。
話したいことはあっても、会った瞬間
気持ちが先に動き爆発した…
会ってみたら友達は記憶を失い自分の事を憶えていなかった。
エマさんの気持ちもわかるし
セイラさんのこともわかる。
セイラさんのように、エマさんに会って
悲しい気持ちにさせないよう
職員会議にかける必要があるわね
「エマちゃんは……もうセイラのこと思い出せないの?」
「すぐには難しいと思うけどきっと思い出してくれる
エマさんのこと信じて待ちましょう!」
「うん…」
私は、セイラさんを教室に帰したあと
職員会議に出す必要性があると教師たちに話し
セイラさんのお母さんにこの話を共有した。
#3 わたしが悪いの?