「いつになったら学校に
来るのかしら?」
「もう1週間だよ。今週も来ないのかな?」
「このまま来なかったり…するのかな?」
教室はエマちゃんの話題で
もちきり。
この子たちは、大切な人を
失うってことを知らないから
そんなことが言えるんだわ…
きたくても来れないわよ
記憶がないんだから
私は黙って教室をあとにした。
すると私宛に職員室から
電話がきた。
「もしもしセイラ」
「ママどうしたの?」
「実はね…」
電話相手はママだった。
家に帰ると私がエマちゃんに
会いに行ったことをきいてきた。
怒られるのだろう……
覚悟していたら
ママの口から出た言葉は
「様子はどうだった?」
怒られなかった。
私はポカーンと口を開け
ボッーとしていると
「実はね、事件のことききたくて
今度エマちゃんに
ここにきてもらって
泊まってもらおうと思うの」
私はエマちゃんが記憶を
失ってること
先生からはエマちゃんと
会うことを控えるよう
言われてることをママに言う
「そうね。私が聞きたいのは
エマちゃんのパパによ
もしかしたら手助けが
出きるかもしれないの」
エマちゃんの力になりたい
手助けしてあげたい
でも、記憶を失っている
エマちゃんに会うことが怖い。
また誰?と尋ねられるのが怖い
話してみたいけど怖い
恐怖心のほうが勝ってしまう
「なんで会いたいの?」
「もしかしたらね?エマちゃんの
ママを殺した犯人の手がかりを
見つけられるかもなの」
ママに理由をきいたら
やっぱり他人のために
動いているのがわかった。
私はママのこういう
ところに憧れて
よく探偵ごっこをしていたのを
思い出した。
「エマちゃんのために
何かしたい」
私の決意は固かった。
気づいた時には
ママが受話器を片手に
とっていた。
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「パパ、電話……」
「ああ」
俺は娘に言われて
受話器をとった。
まさか、この1本の電話が
運命を変えるとは
思いもしなかった。
#5 エマちゃんのために
つづく