「番外編 花弁の行方」#7

「記憶を失う前は、とても仲が良かったと………」

「毎日登下校していたものですから、本人は覚えてません」

俺はエマと小児科にきていた。

セイラちゃんと会わせる日は

日に日に迫り不安を憶えた

俺はアドバイス欲しさに

病院へ

「今のところセイラさんと

会っても拒否反応が

出ていないので会うのはいいかと。泊まるんですよね?

セイラさんのお部屋に

2人で泊まる……厳しいかと」

これまでに感じたことのない

ショックと不安が押し寄せた。

エマが他人の家に泊まる

ことを禁じさせられた

理由は、記憶を取り戻そうと

体調を悪くする

そういうものだった。

「今まで、記憶を思い出した

時になんかあったかい?」

俺の話をきいて

医者はエマに優しく問いかけた。

「頭がすごく痛くなって

記憶を取り戻したあとは

涙がでてる」

エマの発言で初めて気づく

記憶を取り戻したあとに

やってくる痛みと症状

思い出せば、そんなことが多々あった。やはりエマは

まだ俺のことをパパと

認めてないんだろう

信頼されていない証拠だ。

「セイラさんと本当に会いたいかい?」

「会いたい」

「記憶を取り戻すために?」

医者は何度もエマに

確認の質問を繰り返した。

これも、エマにとって

必要なのだろう

そう思って反発したい気持ちを

おさえていたが

ストレートすぎて心配になる。

呼吸を整えて落ち着いていると

「セイラちゃんのためじゃない

私のため」

その目は曇らず真っ直ぐで

記憶を取り戻したい一心と

覚悟している目だった。

俺と医者は言葉を失ったが

エマの揺るがない覚悟に

見初められセイラちゃんの

家に泊まることを許可した。

病院から出たあとも安心は

できないがひとまず

落ち着いている

セイラちゃんママと連絡を

とりつつ、お泊まり会はやってきた。

ーーーーーーーー

「こんにちは!」

「いらっしゃい、2泊3日よろしくね」

「エマちゃんは私と寝るのイヤ?」

「ううん」

「じゃあ、一緒の部屋ね」

「セイラ!こっち手伝って」

「エマちゃん、好きなの触っていいからね」

俺たちはセイラちゃん家へ

2泊することになった。

エマは緊張しているのか

大分落ち着いてきている

セイラちゃん達が俺たちに

お茶菓子を出す間

エマと会話をしているが

エマは無言で何かを取り出した。

「アルバム?」

「これ…みたことあるの」

エマが取り出したアルバムは

セイラちゃんの思い出

ページを捲るとそこには

セイラちゃんとエマが

笑っていた写真が多くあった。

「オレンジジュースでいいかな?」

「おかまいなく」

セイラちゃんママが

オレンジジュースをおいた。

遅れてやってきたセイラちゃんが

エマをみて

「セイラの誕生日をお祝いして

くれたんだよ。嬉しかったな」

セイラちゃんの瞳には

うっすらと涙が浮かんでいた。

エマが自分のことを忘れて

あの日の思い出はセイラちゃんと

セイラちゃんママしか

覚えていないからか

それでもエマのことを

責めないでくれるのは有難い

俺なりに分析していると

エマが立ち上がり

セイラちゃんの近くで

言葉を発した。

「わたし、必ず思い出すから!

あなたのこと!お写真みてると

何か思い出しそうなの。」

エマの思いが伝わったのか

セイラちゃんは涙を

流しながら

「私も協力する。エマちゃんの

記憶取り戻すの…」

「ありがとう」

何日ぶりにみただろう

偽りのないエマの笑顔

2人のやりとりをみて

俺たち親もじーんときた。

#7  「私も手伝うよ」

つづく

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水樹

最初に絵を描き始めたのは小学生の頃でした。 それから、自分の世界観を文字におこしたり、絵にするのが趣味になっています!!

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