この章から薬物、暴力描写などがありますが、使用を容認するものではありません。
「…はぁ。くっそ…。んで?お前をどこに運べばいいんだ…?」
「ふぉああああああああああ!すげぇ!あたしこんなの乗ったことねぇよ!」
「いいから人の話聞いてくれ…」
Mは面倒な客を助手席に乗せず、後部座席に乗せ、車を走らせながらどこに連れて行けばいいか聞くが、彼女はすでにハイになってしまっているのか話が通じそうな感じでは無かった。
「…もう一度言うが、お前をどこに連れて行けばいいんだ?」
「…あああ!ここ!ここだ!ここ!」
彼女はMの再びの問いかけに応じると、ポケットからくしゃくしゃになったメモ書きを渡した。それには、「ワールハーフェン港」とだけ書かれており、おそらく別の依頼者が書いたのだろう。
Mはさっさと終わらせたい上に、方角が合っていたため、車を法定速度無視して一気にかっ飛ばした。
それから数分後、面倒な客はポケットに入れていた葉巻を取り出し、葉巻を両手の親指で潰すように開きながら突然自己紹介を始めた。
彼女の名は「フィロメナ(Filomena)」というらしい。その後の名は呂律が回っておらず、聞き取れなかった。
知ったところで何も起こらないので、聞き返す気もない。正直めんどくさい。
「…それはそうと、お前ここで吸うなよ?」
「え?」
「「え?」じゃねぇよ。それに無視して巻くんじゃねぇ」
「いいじゃんかよ」
フィロメナはMの話を無視しながら葉巻で大麻を巻き、ライターで火をつける。
Mははぁ…とため息をつき、車のサンルーフを少し開けた。
これが、彼女がヤク中を嫌う一つの理由だ。
彼らは話を聞かない上に好き勝手やる。仕事の邪魔をされるのがとにかく嫌なMにとって苦痛でしかない。
「…ううぅ」
「…」
「あのさ…気分悪い…」
そして、彼女がヤク中を嫌う一番の理由は「バッド」だ。
「バッド」。簡単に説明するとドラッグの副作用の影響でとてつもなく気分が悪くなる事だ。
「知らねぇよ。どうせラリってるからだろ」
「うわぁ…いや…」
Mは副作用でそうなってると思い込む。
おそらく、大麻吸う前にいつだかは分からないがLSD等のドラッグを使っている。
この手の客はそういったケースがとても多い。
分かりやすく言えば、アルコール度数高い酒を一気飲みした後、時間差で更に追加したような感覚と同じだ。
ぐったりしていて静かになった為、このままにしておこうと思ったが、車の中で吐かれるよりはマシだと思い、Mは路肩に車を止め、フィロメナを引き摺り出すように降ろすと地面に放置した。
めんどくせぇな…と思いながら辺りを眺めていると、近くの住宅の庭で植物に水やりをしている住人を見つけ、その人に詰め寄ると「借りるぞ」と半ば強引に彼の持ってるホースを奪い取る。
「おい、何すんだ…」
「少しの間借りるだけだ。黙ってろ」
住人は突然の事に驚きながらMの事を追いかけるが、Mは一言そう返答し、自身の吐しゃ物の横でぐったりしてるフィロメナに向けホースの水を顔目掛けてかけ続けた。
「あああああああああああああ!海だああああああああああああ!」
「おい、嬢ちゃん…これって大丈夫なのか…?」
「二日酔いだよ、気にすんな」
水をかけられ続けるフィロメナを見て住人は心配そうに聞くが、Mは面倒そうに返答し、10分間かけ続けた。
こいつに付き合ってらんないと思っているMは「このまま殺してやろうか」と思ったが、さすがにそれを見知らぬ人物が見てる場でやったらまずいのでフィロメナが何も喋らなくなるとホースの水を止め、住人にチップと一緒にホースを返すと彼女の顔を叩き目を覚まさせた。
「おい、いい加減起きろ。このまま置いてくぞ」
「うあぁ…」
フィロメナはMの言葉を素直に聞き、ぐったりした様子で後部座席に乗るとMは運転席に座り、住人の事を無視して車を走らせた。さっさと終わらせたいからだ。
「…なんだったんだあれ…?」
住人はそうつぶやいた。
solitario: chapter2.Ridiculous drug addict「8.Bad Side effect」
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