……あれは高校二年生の時の出来事だった。
突然、親戚から電話がかかってきた。
それは、両親が不慮の事故で大きな怪我をしたのだという。
早退せざるを得ない状況になってしまった。
何があったのかと尋ねたが詳細は分からない。
放課後、あたしは病院に駆け出した。
しかし、面会できるような状況ではなかった。
帰宅したその夜、あたしは残酷な現実を突きつけられる。
親戚から電話があり【二人は助からなかった】という連絡を聞いた。
死因の内容は伏せられた。
そのときのあたしは泣きたくても泣けなかった。
親戚の人曰く、あの時……気を失っていたらしい。
(あまりにも突然の出来事だったから……お葬式に行くのも正直つらかった)
「……まあでも、天国で見てくれるよね。あたしは強い子だもん」
お通夜後、お寺の偉い人からこんな話を聞いたことがある。
【朝宮家は昔から魑魅魍魎との関わりがある。身体を狙われやすいから気をつけなさい】
その時のあたしには言っている意味が分からず理解できなかった。
親戚の人たちにも知らなくていいと言われた。
その後は普通に学校には行けたが。
今でも謎に満ちたままだ。
「あっ、いっけない。そろそろ準備しないと」
あたしが担当する場所はまだ不明で電話待ち。
リュックの中を見て必要な持ち物を確認したとき。
着信音が聞こえた。
「!? はい、もしもし……」
どの場所になっても失礼のないようにと心がける。
すると、その話題の中にとんでもない内容が耳に入った。
「はい。えっ……本当ですか!? お任せください!……はい、失礼しまーす」
着信を切るとあたしは大喜びで目を輝かせた。
なんと、その担当先があたしの大好きな人のお家だったから。
「ふふっ、今行くからね。よーし頑張るぞ!」
ガッツポーズを決めながらあたしはリュックを背負い家から出た。
運が良すぎる。
「行ってきまーす!」
そういえば、電話した相手の声が一瞬だけ聞き取れなかったのはなぜだろうか。
「きっと気のせいだよね!」
これが……悲惨な出来事に巻き込まれることになるなんて……。