「……あれ、ここは?」
『気がついたか?』
『やっと起きたか』
目を覚ますとあたしはいつの間にかベットの上で横になっていた。
その隣には男性と九龍の姿がみえた。
「えっ……あたしって、さっきまで書斎にいたはずだよね……⁉」
『ああ。お前はずーっと眠っていてこいつがベッドまで運んだんだ。催眠術が効いたんだろ』
「うそ……全然気がつかなかった」
それじゃあ、あの甘い香りはなんだったのだろうか。
それに何か言っていたような気がする……ダメだ、うまく思い出せない。
(いつの間にか眠っていたなんて……)
「あの、助けてくれてありがとうございました。それと急に飛びかかったりしてごめんなさい」
『気にするな。俺はランスロット・アスターだ。君は?』
「あたしは、朝宮蘭です……」
『可愛らしい名前だ』
ランスロットは優しくあたしの頭を撫でる。
なぜだろう。
怖いはずなのに、普通に話せている。
「あなたはいったい何者なの?」
『そうだな。エクソシストでヴァンパイアだ。怖がらせて申し訳なかったね』
「いえ大丈夫です……。えっと、エクソシストって何?」
『悪霊や悪魔を祓う。つまり魔術が使えるんだ』
「嘘でしょ……⁉ もう一回頬をつねって……痛っ!」
あたしがここで出会っている人たちはみんな怪物ばかり。
今すぐにでも逃げたいが怖くて足が動かない。
『蘭って、いちいち表情が変わって面白いな。ますます気に入ったぜ』
『ああ。それにとても可愛らしくて、このまま君をさらってしまいたいくらいだ』
(待って⁉ この人たち本物だわ……)
あたしは気付かれないようにそっと後ずさりをする。
(今なら逃げるチャンスはあるよね)
けれど。
『おい、逃げんなよ。まだ何もしてないだろ』
『興味深い。もっと君のことを聞かせてくれ』
「そんなぁ……」
二人は本気であたしのことを気に入ったようだ。