「えっと、あの……ランスロットは、どうしてあたしを助けたの?」
『人間に興味を抱いてな、あとは単純に蘭が可哀想だったから』
あたしは恥ずかしくなってきて身体が熱くなってきた。
だけど一つだけ自分が目的としていることを危うく忘れるところだった。
「そうだ! はやくここから脱出しないと」
あたしの発言にランスロットは疑問を抱く。
(え……顔、近いよ?)
『なぜ、ここから出たいのか? せっかく会えたのにそんな悲しいこと言わないでくれ』
「でも閉じ込められて……。あたしはただ、この家を掃除しにきただけなのに……でも、だまされちゃって……ああっ、もうどうしたらいいの!?」
涙が溢れてくる、こんなにも我慢していたのに。
九龍があたしの目の前にやってきて言った。
『本当に蘭はここから出たいのか?』
「そりゃあ、出たい……けど令菜先生にも会いたいよ……」
うつむくあたしの姿を見てランスロットはそっと肩に手を触れる。
氷のように冷たかった。
『可哀想に、わかった。俺も協力しよう』
「………うん」
今は泣いているヒマなんてない。
こんなところでしょげたら令菜先生に笑われちゃう。
あたしは涙を拭う。
「……九龍、ランスロット。お願い、力をかして。ここから出たい」
『分かったよ。蘭が望むのなら俺は素直に協力してやるか』
『君に涙は似合わない。もし何か悪霊や悪魔が来たら俺が退治してやろう』
『おいおい、ランスロットは悪魔みたいなものだろ?』
『……正論だが、この姿で昔は恐れられてきた。だが今は彼女の心を救ってやりたい』
「二人とも……ふふっ、ありがとう」
二人があたしを慰めてくれるなんて……嬉しい。
そう考えたら、少し緊張がとけてきた。
脱出の手がかりを探しつつ令菜先生も見つけられたらいいだけだ。
他に何もいらない。
あたしはベットから出て体制を整える。
すると、あたしの脳内から何かが語りかけてくる。
お 願 い た す け て
「今の声は……?」
間違いない、あたしはその声を聞いたことがある。
もしかしたら近くにいるのかもしれない。
「待ってて、今あたしが行くから!」
『おい、蘭! 待ちやがれ!』
『九龍君、少しいいか?』
『どうした?』
ランスロットは九龍に耳打ちする。
すると彼は甲高い声をあげて笑いだした。
『マジかよ! もう、実行していいのか?』
『ああ。今、この時がきた』
二人の赤い瞳が妖しく光った。