あたしはいつの間にか涙を流し、そこにいる女子生徒たちの哀しみがひしひしと伝わった。
「そんな……。令菜先生が言っていた化け物って、もしかして箱の中で目覚めた九龍とランスロットのことだったんだ……」
今、この赤い鎖で繋がれている彼女たちは霊そのもの。
『そして私は……それの中に化け物がいると言っても誰も信じてくれなくて……悔しかった』
「そうだったんですね……」
心霊スポットになる理由も納得できる。
この家に入った人に助けを求めたけど、幽霊だから怖がって逃げていく。
令菜先生は、ただ誰かにこの出来事を伝えたかっただけ。
想像しただけであたしは、悲しくなった。
だったらあたしがやるべきことはひとつ。
「ねえ、令菜先生。あたしが全て解放してあげる。捕らわれた彼女たちも苦しみから脱出できるように」
覚悟を決めたあたしは、二人を睨みつけた。
「だから、あなたたちの好き勝手にはさせない!」
『今のお前に何ができる? 次はお前もこいつらのようにしてやるぜ』
『長い眠りから覚めた俺を止めることはできない。くらえ!』
そう吐き捨てると二人はあたしに向かって攻撃してきた。
長い爪が迫る。
「危なっ……」
床に刺さるギリギリでよけることができた。
さっきから二人の様子がおかしいことに気がついたのは表情を見て思った。
あんなに優しかったのに、今ではウソみたいに鬼のような形相だ。
(……でもここで負けるわけにはいかない)
「いいよ。だったらあたしにも考えがあるわ。見てなさい……」
あたしは覚悟を決め彼女たちの繋がれている赤い鎖をじっと見る。
(あれ、触ってみるとなんだか柔らかい……糸?)
「もしかしたら」
あたしは窓際に向かって走りだした。
『蘭ちゃん? 何をしているの……?』
「説明はあと! あたしを信じて!」
そして思いっきり窓を開けると、冷たい風がその赤い鎖を切り裂いた。
九龍とランスロットは悔しそうに顔をしかめる。
『マジかよ⁉』
『おのれ! どこまでも生意気な娘だ……』
「ふふっ、だって鎖にしてはもろいからね!」
(やったわ、思い切って行動して正解だったみたい)
あたしの作戦は、二人を攻撃するんじゃなくて彼女たちを助けるのが先。
彼女たちの想いを決して無駄にしないために。
このまま彼女たちが悪霊になったら……たまったもんじゃない。
「このおおおお! まにあえーっ!」
あたしは勢いよく、窓を開けた。
すると、繋がれていた赤い鎖が解け彼女たちの霊は自由に動き回る。
それを見た令菜先生は目を丸くして驚いていた。
『あ、あなたたち……』
『先生。あのお姉さんが助けてくれたおかげで私たちはもう苦しくないよ』
女の子たちの霊は先生にみんな、釘付け。
きっと嬉しくて仕方ないんだ。
(今のうちに!)
あたしは振り返って二人を睨みつける。