「さあ、ここから先はあたしが相手よ! 令菜先生と彼女たちを悲しませた罪……絶対に償ってもらうんだから」
『そうか、だったらもう容赦はしないぜ!』
『今度は絶対に逃がさんぞ! 覚悟するがいい』
もうこれ以上、犠牲は増やさない。
強くそう決めたから。
あたしは、ほうきを両手に抱えながら二人に向かって突撃した。
「このっ……あるべき場所へと帰りなさいっ!」
九龍はあたしの背後から鋭い爪を突き刺す。
「ひっ……!」
壁にぶつかり悲鳴をあげる。
鋭い爪が壁に刺さっていた。
もし、あと一歩でも動いていたら……。
考えただけで冷や汗が止まらない。
すると、ランスロットがマントを翻し黒い蝙蝠たちを呼び出す。
「やめてっ!」
『おいおい、どうした? その程度か』
『まったく残念だ、その元気な身体がいつまで持つかな?』
息が切れるまであたしは二人の攻撃をよけ続ける。
疲れてきた、このままでは何も解決できない。
(考えて……あたしはこんな争いなんて望んでない……きっと何か方法が)
目線が令菜先生に向いた瞬間。
「しまった……⁉」
足を踏み外し転びそうになる。
すると突然、身体がふわっと宙に浮く。
「なに? これっ……」
二人がしめたと悪い顔をしながら指をパチンと鳴らす。
『やっと運が俺に味方してくれたな、くらえ!』
『大丈夫。すぐに楽になるから』
ドスのきいた低い声が聴こえてくる。
あたしはいつの間にか赤い鎖に繋がれていた。
「いやあああああああ……」
身体が動かない、痛みが全身から伝わってくる。
二人の不気味な笑い声がこの部屋に響き渡った。
無様な姿のあたしを見た令菜先生は叫んでいた。
『蘭ちゃん! もう……やめて。充分よ……』
「イヤだ……」
あたしの目から涙が止まらない。
あきらめるわけにはいかないって誓った。
こんなところで、簡単にくたばるなんてあたしのプライドが許さない。
ゆっくりと深呼吸をする。
「令菜先生……あたし。やっとわかったよ」
『え?』
すると、心の中で考えていたある作戦が浮かんできた。
(これは駆け引きだ、慎重にいかなきゃ)
あたしは二人を見て叫ぶ。
「ねえ…! 九龍、ランスロット。もうこんなことやめよう?」
『なんだと?』
二人が声を揃えてあたしを睨みつける。