この作戦はリスクが高いけれど、令菜先生を助けるためなら。
あたしの身体は、どうなっても構わない。
「決めたわ! その二つの箱。……いや、二つの棺をもらう。だから先生をかえして」
『何を言っているの⁉ そんなことしたら蘭ちゃんが呪われるのよ!』
あの棺のせいでこの家やみんながおかしくなっている。
でも、今は怖くない。
あたしが行動しなきゃいつまでも呪いなんか解けない。
「幸せにならなきゃいけないのは、先生の方だよ。……あたしはあなたに会えただけで十分」
『⁉』
『蘭ちゃん、あなたは幸せになりなさい。誰かを助けられる人になって。約束よ?』
あの時、令菜先生があたしを楽にしてくれた言葉。
あの言葉があったからこそ、今のあたしがいる。
それは今でも忘れない。
「あたしは決めたんだ、もう逃げないって! だから令菜先生、笑って?」
バキッ!
あたしが持っていたほうきが青白く光りだし粉々に砕けていく。
「わあっ!?」
『てめえ……ふざけやがって!』
『これでは、目的が達成できない……⁉』
二人は叫び声をあげ、それと同時に先生とあたしを縛っていた赤い鎖が解けた。
なんだか身体が軽くなった気がする。
『蘭ちゃん……』
あたしは、先生をぎゅっと抱きしめる。
「……令菜先生! 今までありがとうございました。あたしは約束通り誰かを助けられる人間になることをここに、誓います」
この呪われた棺はあたしが管理する。
二人が暴走しないように。
『……立派に成長したみたいね』
『もういかなきゃ。蘭ちゃん、私を助けてくれてありがとう』
先生が目の前に近づいてあたしの頬にキスをする。
「っ…! あとはあたしに任せてください……」
優しくほほ笑みかけると、令菜先生は女子生徒たちの霊と共に、天へと昇っていった。