勇気を出すのは怖かったけど、それでも令菜先生を助けることができた。
けれど、まだ何も解決していないのが一つ。
『おい……よくも俺を怒らせたな!』
『血をよこせ! まだ終わっていないぞ!』
九龍とランスロットは目を血走らせあたしの背後に襲い掛かる。
「はっ……いけない⁉ 棺は?」
我にかえり、無意識にあたしは走り出していた。
(もしかしたら、あれに秘密が隠されているのかも。だったら……!)
「あった! これだ」
両方の蓋は開いたままだ。
その下をよく見ると、小さい何かが目にうつる。
「これって」
日記の切れ端だ。
【この棺のせいで全てが狂ってしまった。なんとか呪いを解くための方法を必死に考えた。まるで棺に意思があるかのように。もしこれを開けてしまった者にこれを書きます】
その下に、赤い血文字が書いてある。
どうやら呪文が書いてあるらしい。
だが、その内容があまりにも恥ずかしい。
けど…そんな事言ってられない。
「……イチかバチか」
『逃がさない』
『これでようやく満たさせる』
九龍とランスロットがあたしの首筋に犬歯を近づけようとしている。
「っ⁉ ええい、もうどうにでもなれ!」
あたしは、力強く血文字で書いてある通りに唱えた。
「主よ、よくお聞きください。あたしは、二つの棺の新たな持ち主として……朝宮蘭は、二度と彼らの逆鱗に触れないことをお約束します……」
振り返って真剣な眼差しで九龍とランスロットを見た。
「あなたを愛しています」
『なっ……⁉』
二人の動きが止まり、突然しゃがみ込む。
二つの棺からあの甘い香りがしなくなった。