その後、あの心霊スポットと呼ばれていた洋館が火事になった。
全てを燃やし尽くした跡が残っている。
しかし、洋館に設置された防犯カメラだけが残っていた。
いつの間にかドアの外に落ちていた日記と写真。
警察が調べた結果、バイト先の担当者が捕まった。
そこに人影が写り女子生徒たちを拘束している様子が見える。
その理由は一番最初に、この洋館に来ていたこと。
女子生徒を監禁し牧原令菜と交際していた。
後から分かった話だが、床の中に隠されていた数名の女子生徒と牧原令菜の遺体が発見される。
容疑者は血まみれの姿で【幽霊を視た、化け物が現れた】と叫び、ノイローゼ状態に。
それ以来、この場所は立ち入り禁止になった。
その夜、蘭は俯きながらテレビを消す。
ニュースになるくらいなら、行かなきゃよかったと後悔している。
二人は蘭に全てを教えた。
あの甘い香りは人間の精神を不安定にさせ幻を見せることを。
犯人が持ってきた棺を呪われた楽器ケースと騙し、中に本物のキョンシーとヴァンパイアが眠っていることも知らずに。
どうやら棺には意思があり、開けた瞬間から呪いは始まっていた。
あの時、ドアを自分で開けなくて正解だった。
「もし、あのままずっと洋館にいたら……!」
『奴は令菜の親族を〇め、この娘たちを我がモノにしようとしていた。蘭は運が良かった』
『全く、自業自得だぜ。あいつの血は不味かった。思い出しただけでもイヤになる……』
九龍は犯人を恐怖に陥れ、ランスロットは蘭を助けたのだ。
『結局、俺たちは奴の道具扱いに過ぎなかった』
『ああ。だが、蘭が開けてくれた時は純粋な心だったから呪われずに済んだのだ』
「他人事みたいに言わないで。運がいいなんてそんな」
こんなオカルト絡みの出来事は誰も信じてくれるはずもない。
真実を知っているのは蘭だけだから。
蘭は窓の前に立ってカーテンを開け、夜空を見上げる。
「令菜先生や女の子たちは何も知らずに返り血を浴びたんだ……あたし、生きてていいのかな」
『今更何言ってんだよ。大好きな人だったんだろ。いなくなったら悲しむぞ』
『そうだ。彼女たちの分まで蘭は生きるべき。俺たちも傍にいる』
二人は、涙が止まらないあたしの背中に寄り添う。
「そうだよね、ごめんなさいっ……」
九龍とランスロットは、なにも言わずただ優しく微笑んだ……。