「…あんたってこれしか持ってないの?」
フィロメナの所持品検査を素直に受けているM。
Mのポケットからはスマホと少量だが多額の札束が挟まれているマネークリップ、車のキーしか出てこない為フィロメナは不思議がっていた。
「悪いか?」
「いや?別にいいんだけど。あんたどうやって敵殺ってんの?」
「え?こうだが?」
フィロメナの問いにMは簡単に返答すると、彼女はフィロメナの腹部目掛けて一発殴る。
「がっ…はぁ…っ!」
フィロメナは腹部を押さえながら倒れこむ。
Mの表情は涼しげだったがそれにしては一撃が重く、息が出来ない。
「分かったか?」
「分かったか…って…あんた…少しは加減を…」
「加減?するわけねぇだろ。普通」
Mはフィロメナの言葉にめんどくさげに返答すると、続けて話を始めた。
「…大体よ、お前色々と詰めが甘すぎんだよ。他の奴なら騙せると思うが、お前警察じゃない…いや、どういう理由だか知らんけど…クビになってるだろ?」
「…っ!」
「まずはこの部屋だ。入った瞬間生活感のなさに凄く違和感を感じた。このやり方は警察がよくやるからバカでも分かる。それに、薬やってふらついてるようにしているが歩き方が明らかに不自然すぎる。…まあ気になる点はもっとあるが…完全に相手が悪かったな」
「…ちっ!」
Mの言葉にフィロメナは舌打ちをする。
そして、フィロメナの脳内に警察署で行き過ぎた捜査のせいで失敗してしまい、クビになった記憶がよみがえる。
数多くの犯罪者を相手にしていたとはいえ、それ以上の数を相手していたMに勝てるわけがない。
「…んで…あたしをどうすんのよ…殺すの?」
フィロメナはもうだめだと心の中で確信し、そう言う。
「…あ?どうするって言われても…。って殺すわけねぇだろうが、そんな事で捕まりたくねぇよ。馬鹿か?けど、脅したところでお前の性格上チクるだろ…」
Mはそうつぶやきながら、あるところへスマホでチャットを送る。
「…っし、じゃああたしはここでお暇させていただくわ」
「えっ…!ちょっと…!私はどうすればいいのよ?!」
「あ?ここで待ってればいいぞ。私からお前に仕事の成功を祝ってピザ頼んどいたから。食いたくないんなら帰ってもいいが」
戸惑っているフィロメナに対し、Mはそう言うと静かにアパートの玄関を閉め車に乗り込む。
「…」
それから数日後、久しぶりに自宅に帰ってきたMはシャワーを浴び終え、リビングの65インチテレビの電源を入れる。
テレビでは丁度ニュースが流れており、内容は「交通事故」、「環境保護団体のデモ運動」「女性がピザ配達員に殺害される」、「某国の戦況」というものだった。
「…今日はナポリタンでいいや」
無地のTシャツで下は短パンで少し濡れている髪を首にかけているタオルで拭きながらMは冷蔵庫の中にある冷凍食品を選別しながら呟く。ナポリタンを電子レンジに入れ、解凍を始め、Mは「つまんな」と小さく呟きチャンネルを変えた。
solitario: chapter2.Ridiculous drug addict「10.Performance and Demonstration and pizza. act02」
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