碧い栞と王子様#21

詩織……起きて…

頁次は、詩織に呼びかける。
これまでに過ごした記憶を思い出し浸り

貴女はここで居なくなってはいけないの…それが約束だから…

強い信念と想い、精霊のチカラで詩織を包み
詩織の脳内に声を直接届ける

『誰かが…私を呼んでいる?』

『………り……詩織』

『とても切なく今にも泣きそうな声……』

『お願い………起きて!』

『私は…何をしてたんだっけ?さっきまでの記憶がない………
あの声は聞いたことがある…何度も一緒に冒険をした。
楽しい思い出がいっぱい……それから………』

視界に映ったのは、桃色の髪をした小さな精霊
私の名前を何度も何度も呼び続けていた声に間違いない…
なのに…名前を思い出せない……

詩織!

頁次?

さっきまで名前を思い出せなかったのに呼ばれたら思い出せた
頁次…私の本界でのパートナー

そのままでいい、貴女に言いたい事があるの

私…に?

あなたしか持つ事を許されないブルーカードについて

このリボンについて知ってるの?!

ええ…そのブルーカードには精霊のチカラが篭っているわ
とても偉大なパワーを感じる

もしかしてストーリーとか?

いいえ、もっと強大なチカラ… いまの精霊界で初めて人間を愛した精霊
ブルー様。その方がブルーカードにチカラを込めたの

ブルー様?

人間界にいた時は碧と名乗っていたそうよ

だから、ブルーカードと呼ばれていたのね

そして…そのブルー様が愛した人間が詩織のおばあさま

だから、おばあちゃんはコレを持っていたのね…

私は漸くおばあちゃんの形見について知ることができた。
リボンがブルーカードと呼ばれていた真実
かつて、人間界に来ていた精霊・ブルー様は
私のおばあちゃんを愛していたんだとか…。

ブルー様はいまどこに?

亡くなったわ…詩織のおばあさまが亡くなった時に
自分のチカラを全てストーリー様に付与して
人間の姿のまま…亡くなっていった

ストーリーは私の兄妹なの?

家族ではあるわね…だから人間に化けた時、青い髪をしてたでしょ?

うん…アレは精霊が化けてるから奇抜な色をしてるだけかと思ってた…

1番最初は、思い入れのある姿になるのよ…

ストーリーは私の家族だった………
本の趣味も確かに合ったけど
教えてないのに家が分かったのは
一度来たことがあるから?
そう思うと納得もした。

でも、どうして今言おうと思ったの?

もう…時間がないの……

どういうこと?

ストーリー様がね…詩織が刺された事怒ってて人間は本界には
来れなくなってしまったの。だから、私と会うのもコレが最後…
栞子…貴女のおばあさまに言われたことを守ることができたと思う
詩織…いままで、ありがとう!

唐突に告げられたブルーカードの真実
おばあちゃんとブルー様が愛し合ってたこと
どちらも、もういないこと
本界に…行けなくなってしまったこと
頁次からの…別れ

いいじゃない!本界に行っても…私の注意力が散漫してたことだってある
だから…私から楽しみを奪わないで!!お願い…
もうコレしかないの……ただ、普通に本を読むだけの生活に
今更戻れないよ!!本界にはみんな(本で登場するキャラクター)がいる
それに………頁次がいるじゃない!!だから…私……

精霊の頁次が私の言葉を聞いて黙って涙を流した
その表情は切ないもので……

ダメなの………元々、こうなる前に詩織が本界から卒業しないと
いけない時期はそろそろだった。それがちょっと早まっただけ…
人間が長く本界へ居続けると生命力を奪われてしまう
つまり死が早まる…私は、ブルーカードを詩織に使わせる条件として
ブルー様に言われたわ…『詩織を死なせてはいけない』
貴女がこれ以上、ブルーカードを使って冒険すると約束を破ってしまう

頁次に科せられた重い約束
それは、いつしか頁次自身を縛るものとなっていた。
私を死なせてはいけない…その事をずっと守ってくれていた…
反論する気がおきなかった…私は生きることを諦めてない
でも…その代わりにココ(本界)に来れなくなってしまう…
覚悟を決めよう…頁次やおばあちゃん、ブルー様のためにも

わかった、終わりにしよう…
でも最後にオリジナルストーリーだけやらせて…

いいわ…最後に冒険しましょう…

本界に来れなくなってしまうことを鵜呑みにした私は
最後の冒険を頁次とすることにした。

つづく

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水樹

最初に絵を描き始めたのは小学生の頃でした。 それから、自分の世界観を文字におこしたり、絵にするのが趣味になっています!!

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