短編 「どこかの小さなタバコ屋」

どこかの路地裏にて…。

一ヶ月前の訳のわからない猛暑から一変し、一気に朝と昼の気温差が酷くなり快適なのかよくわからない中、友人にお使いを頼まれてしまい俺は目的地まで歩いていた。

…まあ、お使いと言っても「タバコを買いに行って欲しい」というものだ。
俺は吸わないし、正直言って自分で買いに行ってくれとは思うが、代金は後で貰うとして数日に迫っている友人の「誕生日プレゼント」って事にしておけばいいだろう。

長年の付き合いだと逆に何が欲しいのかもいまいち分からない上に聞きにくいんで、都合が良い。

だが、一つ厄介なのが友人の吸っているタバコはコンビニで売ってない「珍しい物」だという事だ。

俺はネットで調べた目的地にたどり着くと、グラフィックアートや、何かのバンドなどのステッカーがベタベタと中が見えにくいぐらい、良く言えば「アート作品」に見えるぐらいに貼られたガラス張りのドアをゆっくりと開け店内へと入る。
店内は狭く、壁一面には様々なタバコのパックが陳列され、奥の方には軽くつまめるぐらいの量の駄菓子がぶら下げられ、ごりっごりのヒップホップがまあまあな音量で流れている。

それでも圧倒されるが、一番圧倒されたのは「タバコ臭」だ。
一昔前のゲームセンターや喫煙所内と言わんばかりのキツさ。吸わない身からしてみれば苦痛でしかない。
それもそのはず、奥の方で半袖短パンでショートカットの女性の店主がタバコを吸いながら立膝の状態でパソコンをいじっている。そして、近くに置かれている灰皿には吸い殻が刺さっていると表現した方が正確なレベルで大量に積まれている。

「…チッ」

店主の体全身には大量のタトゥー、口の下にはシルバーのピアスがあり、(あんな人本当にいるんだ…)と思いながらチラ見していると一瞬目が合ってしまい、舌打ちされてしまった。
そんな格好してるから…と心の中で思ったが、さっさと退散したい気持ちが勝り友人に頼まれた銘柄等を探し、見つけたら手に取っていく。

(地味に多いな…)

「700…820…880…170」

友人に頼まれた銘柄等を手に取っていくと、店主は何か数字をぶつぶつと言い始めた。
何だろうと店主をチラッと見ると、店主は俺の事を睨みつけていた。

「なんだよ…?」

「い…いえ…」

「ならさっさと会計済ませてくんねぇか?2570円」

店主は低いガラガラの声で言った。
頼まれた銘柄等を手に取っている間に店主は、俺が手に取った商品の合計金額を計算をしていたようだ。だから謎の数字をぶつぶつ言っていたのかと納得がいった。…まあ、接客態度は最悪だが。

俺は長居するものではないと本能的に察し、そそくさと会計を済ませ店を後にした。

後日、買ったタバコは友人に渡し、解散後行きつけになってしまったカフェへ行き、蓮さんへ友人に頼まれたーやタバコ屋がーと言った事を愚痴ってしまった。

「ああー、あそこのタバコ屋?あれ私の先輩」

蓮さんは相変わらず本を読みながら一言言った。
それ以上の事は話さなかったが、俺は蓮さんの発言に驚きと同時に、世間は広いようで意外と狭いんだなぁと一杯600円のブラジル産のホットコーヒーを一口飲みながら感じた。

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柏木桜

悪そうな女の子(たまに違う)、車高低い車描いたり小説書いたりする人です。 どうもよろしくです。 たまにそれ以外もやるかもです。

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