「…。」
「どうよこのガヤルド!結構いい感じに出来上がったと思わない!?」
あの面倒な一件から数日が経ち、Mはエルヴィーラに見せたいものがあるからという連絡を受け、半ば無理やり行くことになった。
そして、いやな予感は的中してしまいエルヴィーラがMを呼び出した理由は、ずっと作っていた「ランボルギーニ ガヤルド」のカスタムカーが出来上がったから見ろというものだった。
色はワインレッドで外装に日本の某カスタムメーカーのワイドボディがフル装備されており、バンパー下、サイドスカート、リアディフューザーがフォージドカーボンとなっている。
そして、ホイールとフェンダーの隙間は1~2mmあるかないかで、車高は着地しているのかというほど低い。
内装もかなりいじったとエルヴィーラは自慢げに言うが、車にまったく興味ないMからしてみれば心底どうでもいいことだ。
Mは話を横流しで聞きながら苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべる。
ぺらぺらと話を進めるエルヴィーラの話を聞いてるふりしていると、Mのスマホに一件の着信が入った。
連絡先は知らない番号だが、Mの電話ではよくあることなので普段通り着信に出る。
「…はい」
「こんにちはー、今大丈夫かしらー?」
「ああ。それで、用件は?」
「それは私の家で話すわ。…そうね、今いるところから車で一時間といったところかしら。そのピンク髪の話から解放させてあげるわ。今すぐ来ればの話だけどね」
電話の相手は女性で落ち着いた様子だ。
だが、彼女の口から発せられた今Mがいるところから相手のいると思われる場所までの所要時間、近くにピンク髪…エルヴィーラの事を言われ、Mは少し疑問に感じた。
位置情報なら電話のGPSを使えばおおよその位置が分かるが、なぜ近くにエルヴィーラがいることを知ってる?
エルヴィーラとレイラが私を嵌めるために何か仕組んだ?と思ったが、正直彼女たちを信用してないとはいえそんなことするか?と思う。
それ以外の理由となると、私を監視してる者がどこかにいる?
「…ああ、私たちのことは気にしないで?自然体で、探しちゃだめよ。どうせ見つからないんだから
「…お前は何がしたいんだ?」
「何って、仕事を依頼したいから電話したんじゃない。けど、急ぎじゃないから優先度は低くていいわよ。他に仕事あるのならそっちを優先して頂戴ね。行く気があったら場所教えるわ」
Mの受け答えに電話の女性は軽く対応すると、ぶつっと電話を切った。
「ねぇ、M。…大丈夫?」
「…ああ、大丈夫だが…。なんだ?」
「実はエルヴィーラ様のより、こっちが本題なの」
レイラはMのいつもと少し違う行動に疑問を感じながらも、彼女に新たな仕事の依頼を出した。
内容は「銀行強盗の送迎」というものだが、レイラはなぜかMの心配ばかりしていた。
「…って内容なんだけど、無理なら断ってもいいのよ?」
「いや、大丈夫だ」
「…そう。まあ、無理はしないでね…」
Mはレイラの言葉を聞くと、自分の車に乗り込み目的地へと移動した。
その光景をレイラは不安そうな目で見る事しか出来なかった。
solitario: chapter3.Countdown to Collapse「11.First Contact」
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