どうやらここは、妖やモンスターが出てくるという設定で経営しているらしい。
ただ脱出すればいい、口では簡単だが意外と難易度が高いのだ。
俺は気づかれないように彼女たちの後を追う。
(……マジの霊もいるようだ。気を引き締めないと)
最近視えるようになったのか自分でも驚いていた。
だからって全然怖くはない、霊的なモノが嫌いなだけだ。
その時だった。
「きゃあああああああっ」
「やだ……足が動かないっ」
「シアさんは? ねえ、黙ってないで助けてよ!」
彼女たちは顔を青ざめてパニックに。
シアは誰もいない方向に向かって話しかける。
「やめて……困っているだけじゃない。かわいそうよ」
よく見ると、青白い顔の少年が彼女たちに向かって襲いかかる。
悲鳴は収まらず、彼女たちはシアを置いて逃げ出した。
途中で人形が動きだしたり、人魂がゆらゆらとついてくる。
「ぐっ……!」
一人取り残された、シアはしゃがみ込み目を閉じる。
仕掛けがまるで本当に動いているかのようだ。
それらが彼女の目の前に迫りだした時。
「えっ……」
「せえいいい!」
俺は急いで走り、彼女の手を繋いだ。
「ふう……危なかったぜ」
「どうして、あなたが……?」
シアが目を丸くする。
あいつらを驚かせようと作戦は失敗したが、シアが残ってくれたから俺的には好都合だった。
「大丈夫か?」
「え、ええ……」
俺は彼女の手をぎゅっと握り体制を立て直す。
「コマウォヨ(ありがとう)。えっと……」
「俺は城ケ崎狂哉だ。同じクラスだろ」
「私、ソ・シア。狂哉君はどうして助けてくれたの?」
手を放し、シアの方を見つめる。
やっぱり震えてる、今まで我慢しているようだ。
「理由はねえよ。ただ、あんたを見ていたら放っておけなくて」
「そう……」
(俺の高身長でビビってんのか。だが、こいつは逃げるそぶりはないようだ)
確かにそうだ。
俺はデカいしバスケ選手かと思われるほど。
「ちっ……あいつら、あとで懲らしめる予定だったんだが。ケガはないか」
「クェンチャナ(大丈夫よ)。優しいのね」
シアは小さく微笑み、やっと笑ってくれた。
だがすぐに険しい顔になる。
「けど……私のことを魔女って言うのでしょう?」
「言わねえよ。シアが魔女だろうがオカルトに詳しいが関係ねえ」
その言葉を聞いたのかシアは驚き、気がつけば両目から涙を流していた。
人魂がこっちにゆらゆらと流れてきて、まるで俺らを励ましているみたいだ。
「おかしいわ……なぜ? あなたに、そう言われたの初めて……どうして」
「だから気にすんな。俺が友達(ダチ)になってやる。……守ってやるからよ」
シアは泣きながら俺の方に抱きつく。
彼女が落ち着くまで俺は離さない。
俺は彼女を守ると、そう決めたのだから。