何度も歩いてみたが、出口らしきものは何一つ見つからない。
お化け屋敷といっても館をモチーフしていることだけはわかった。
しかし、棺桶や鏡に障子など和と洋がごちゃ混ぜの物がありすぎる。
俺は人魂が周りを囲っているのをキッ、と睨みつける。
「お化け屋敷って何か謎や仕掛けを解かないといけないんじゃねえの?」
「けれどここは脱出することが目的。彼らはただ、驚かしてくるだけでしょう?」
そういえばそうだった、ここは遊園地ではない。
シアがここまで冷静だとは思わなかった。
その時。
「ん? 分かれ道だ」
「何か書いてあるわ。【この先幽霊は現れない、妖と魔が潜んでいる】ですって」
看板に血文字で書いてあるとは俺たちもなめられたものだ。
本物がいるとシアが言っていたのは、霊ではないのかもしれない。
とにかくまずは、どっちの道に進むかを決めなくてはいけない。
「どこが正解か分かるか? 俺にはさっぱりだ」
「そうね……。左側が怪しいわ。こっちに進みましょう」
シアが左の道を指さすと、一瞬なにかが動いたようなような気がした。
俺は反対の道を見る。
「なあ、右側にしないか? 何かイヤな予感がしたんだが」
「いいえ。左にしましょう。私を信じて」
シアの力強い言葉に俺は驚いてため息をつく。
どこからその自信が出てくんのかよ……。
「わかった……お前がそこまで言うなら」
「コマウォヨ(ありがとう)。さあ行きましょう」
シアの言うことに従い俺たちは左側の道に向かった。