(あれ、何かがおかしい……)
私はさっきまで狂哉君と一緒に探索していたのに。
油断したのが運のツキだったみたい。
「狂哉君ー? どこにいるの? ねえ、返事をして!」
声を大きくして叫んだ。
返事がない。
大きくため息をついて、ついにはしゃがみ込む。
(私のせいできっと迷子になったんだわ)
すると背後から冷たい手が肩に触れる。
『彼に好かれてしまったようね』
振り返ると冷香さんが困った顔で話しかける。
(また知らない誰かが、狂哉君を……)
「彼? いったい誰のこと?」
『わたしの他にも霊力が強い人間に興味を持った者がいるみたい』
(だとしたら、はぐれたのはその彼という人物が何かをしかけて狂哉君をさらった?)
震えが止まらなくなり私はとても心配になる。
でも、狂哉君はきっとそんな事でパニックになったりはしないイメージがある。
可能性にかけてみようか……それとも。
「ううん。やっぱり心配だわ。冷香さん、狂哉君を探したい。お願い、力をかして」
『本当に優しいわね。シアの願い喜んで叶えましょう』
冷香さんが宙に浮き、この先の道を教えてくれた。
『こっちよ!』
私は冷香さんの指示に従い狂哉君を探すことにした。
走っているけれど周りにゆらめく狐火がどんどん多くなっている気がする。
いや霊魂なのかもしれない。
どちらにせよ、早く彼を探すことに集中しなくては。
その時、冷香さんがぴたりと止まる。
『やっぱりあなたはわたしの……ふふっ』
「急に抱きしめないで。褒めても何もでないわ」
冷香さんが強く抱きしめる。
冷たい息を吹きかけられたが私にはビクともしない。
普通なら凍えてしまうけど……。
沢山着こんできて助かった。
冷香さんが何かに気が付く。
『あそこにいたわ。何か話し込んでいるようだけど』
あっさり見つかって私は少し安心し胸をなでおろした。
けれど狂哉君の様子がおかしい。
私はとなりにいる男性から強い気配を感じた。
そして冷香さんが私に耳打ちしてきた。
「ええっ……?そんなことって」
『けど、もうあなたも逃げられないのよ?』
「うそ……」
冷香さんの目に光がないことに、私はそれにやっと気がついた……。