その後、あのお化け屋敷は跡形もなく消えていた。
あれから俺とシアのカップルができたと学院中がウワサになりいじめはなくなった。
シアをいじめていたヤツらは退学処分となったらしい。
彼女自身はこれからは俺と昼休み、共に帰り道に誘うことになった。
一つの問題は解決したがまだ終わっていなかった。
そんな放課後、誰もいない教室で二人は話していた。
「ねえ、狂哉君?」
「どうした?」
「なんだか寒くない?」
「言われてみれば……」
冷気と覇気が二人の身体をまとう。
聞き覚えのある声が耳元でささやく。
『見つけたわ、シア』
『夜はこれからだぜ、狂哉?』
「これって……」
「マジかよ」
真っ暗な部屋で、フッと蝋燭の火を消して黒い本を閉じる。
これが俺が体験した奇妙な話だ。
「へえ、それはとても背筋の凍る話だね。僕だったら耐えられない」
「ええっ⁉ これで終わり? 考察系の怪談なの?」
「ああ。あの時は自分でも驚いたからな」
赤い本を持つ青年。
青い本を持つ少女。
黒い本を持つ少年。
だってこの物語は……。
自分たちが経験したことを本にしただけ。
「話したらスッキリしたぜ。ありがとな」
「うん。誘ってくれてありがとう」
「こちらこそ、よかったら連絡先交換する? 僕のはこれだけど」
「わぁ……ぜひ! あたし、こういうの憧れで!」
「フッ、俺らは共に怪談を話した仲だしな」
床に落ちている蝋燭が沢山あるのは、彼等以外の人物たちが話していったあと。
しかし、なぜ今は三人しかいないのか。
三人の背後から異変を感じる。
強い視線、笑い声、冷気、血の匂い。
そこに、本物(彼ら)がいてもまだ怪談を続ける気?
『早く気づいてあげなさい』
黒髪の少女が三人を見つめて冷たく言った。