solitario: chapter3.Countdown to Collapse 「12.Crazy couple」

※この話から最終話まで犯罪、暴力描写などバイオレンス表現があります。できるだけ描写はぼかしますが、苦手な人は読むのを控えてください。

エルヴィーラの一件から数時間が経ち、Mはレイラから受け取った依頼者が指定した目的地へと車を走らせた。

「へー、あんたが送迎のねぇ」

依頼者は年下女性二人だが、異様なまでに馴れ馴れしい上に恐らく未成年。
そして、彼女達には常識が通用しない感覚がした。
エルヴィーラや薬物とかで狂っているのではなく、素で狂っていると言った方がいいだろう。
依頼者は親切に「メルセデスベンツ Gクラス」を送迎車として用意してくれたようで、Mの車は使わなくていいようだ。
それも、依頼者の異様さを掻き立てている。

「銀行強盗の送迎」は今までの経験上なくはない仕事だが、今回は数時間前の一件の影響か嫌な予感がしていた。そして、その予感は的中してしまった。

普通の銀行強盗なら、顔を隠して出来るだけ被害者を出さないようにやるものだが、彼女たちは真逆の事をした。
銀行に入るといきなりMAC10を四方八方に発砲、抵抗すれば撃ち殺すという非道っぷり、狂っていなければできない行動ばかり繰り返す。
依頼者が笑いながら銀行から出てくると、Mが運転する車に乗り込み、警官にも笑顔で、この行為が「快感」だと言っているように発砲する。
何を考えてるのかさっぱり分らない。

先述した通り、普通なら特定されたくないものだが彼女たちは「自分たちの犯行を見てください」「私たちは犯罪行為をしていますよ」と言わんばかりの行動ばかりしている。

身元を知られたくないMからすれば、すべての行動が迷惑で仕方がない。

それもだが、彼女たちの行動以上に「どこから車や大量の武器を用意したのか」がMの一番気になっている事だ。
普通なら拳銃人数分準備すれば上出来といった感じだが、片方はMAC10もう片方はM4カービンを持ち、それらの予備マガジンは手持ちで3つ、そして車の中にはAK47、2016年まで米陸軍に採用されていたM110 SASSなど異様なまでに準備が整っている上にこんなにいるのか?と思う量で、まるで「これから戦争に行きます」というレベルだ。
依頼者の彼女達が準備したとは到底思えない。
裏にそれらを準備し、手助けしている組織がいるはずだとMは考える。

銀行強盗から数分が経ち、警察とのいたちごっこは不自然なまでに簡単に終わった。

「終わったー!!」

依頼者の一人が大金の入ったバックを乱雑に大型の車が何台も入るぐらいスペースのある倉庫に投げ入れながら言う。
Mはそれを眺めているだけだが、彼女たちの事が気になって仕方がなかった。
だが、これ以上詮索しても意味はないだろうと他人の事に無関心なMはその場を離れようとする。

「えー?帰っちゃうのー?」

「ああ、お前らの依頼はこれ以上ないだろ?」

「いやぁ~?まだあるよ?私らの「仕事」が」

依頼者の一人の女性がMにそういうと持っていたMAC10を突きつける。
嫌な予感が再び的中してしまった。彼女たちはMを生きて帰す気はないようだ。

「…誰かからの依頼か?それともお前らの趣味か?」

「んー両方かなー。けど、「殺すな」って言われてるしなぁ~」

「誰に」

「えー?知ってるんじゃないの~?相手は知ってるって言ってたけどなぁ~…ねー?」

「うん」

Mは彼女達に聞くが、やはり彼女たちの裏には何かいるらしく、Mにも面識がある相手のようだ。
となると、思い当たるのは一人しかいない。
エルヴィーラのところにいた時、電話を掛けてきた謎の人物だ。

「…あっそ」

Mは二人と関わるのはもうたくさんだと思いながらめんどくさげにそう言い、彼女らを無視して倉庫を出る。
あの電話で「優先度低くていい」と言われたが、今回の一件を考えるにこれから入ってくる依頼には全てあの電話の相手が関わっていると思った方がいいだろう。

「…ちっ」

場面は変わり、倉庫内。
依頼主二人は、ニコニコしながら会話をしていた。

「帰っちゃったねー、これでいいのかな?「アリシア」?」

「いいんじゃない?あいつには好きにしていいって言われてるんだし?」

MAC10を持っている「アリシア」はソファの上にM4カービンを置き、タバコを吸っている「ミア」にそう言われ、笑顔で返答すると、ある所へと電話を掛け始める。

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柏木桜

悪そうな女の子(たまに違う)、車高低い車描いたり小説書いたりする人です。 どうもよろしくです。 たまにそれ以外もやるかもです。

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