それから数十分が経ち、アリシアとミアがいた倉庫から長身で体格の良い女性が倉庫前に止められているキャデラックエスカレードの運転席へと乗り込む。
「お疲れ、案外あっさりね」
助手席でスマホを弄っている迷彩柄のズボンを履いた女性「エレン」が一言いう。
「そんなもんだろ」
運転席に座り、エンジンをかけながら「アレクシス」はそう返答する。
ラジオがかかるのと同時に車を発進させ、エンジンがうなりをあげる。
彼女たちは何事もなく立ち去るが、倉庫内では強盗で取った大金はそのままに、アリシアとミアが撲殺され地面に横たわっていた。
「そういえば、スマホ拾った?」
「あ?そんなの拾ってくるわけねぇだろ」
「…はぁ、仕事増やさないでよ。まあいいけど…」
エレンはアレクシスの言葉を聞き、だるそうに返答をし、スマホをいじり続ける。
その後、彼女達の会話は無く、車内にはBGM代わりのラジオから50セントの楽曲が流れ、とある場所へと車を走らせていく。
場面は変わり、イタリア北部。
Mはエルヴィーラの住宅で電話を掛けてきた相手に再び電話を掛け、当事者の居場所を聞き出した。案外あっさり教えてもらったその場所へと車を走らせる。
季節は少しずつ秋へと移り変わっていき、日が沈むのがどんどん早くなっている。
(…ここか)
Mは目的地へとたどり着いた。
場所は海沿いの高級住宅地から少し外れた山を切り崩したように建てられており、意外にもゲートや高い壁と言ったものはない。
そうはいったものの、目的地の敷地内は少し異質な感じがする。
敷地内に入り、玄関前へ立つ。黒服の警備だと思われる男に自分の名前を伝えるとボディーチェックなども無く建物の中へと案内される。それぐらい下に見られてるのだろうか。
男がドアをノックし、Mは室内へと招き入れる。
「あら、意外と早かったのね」
部屋の中は年代物の机を取り囲むように大量のアンティーク家具が置かれ、近くのソファに暗めの茶髪で片目が隠れており、黒のドレス、黒のハットをかぶった女性がワインを嗜んでいた。
「…。」
「…あら、なんでそんなに睨むのよ。そんなかしこまらなくていいわ」
「そんなことはどうでもいい。お前には色々聞きたいことがある」
「聞きたい事?私の名前かしら?私は「オリビア」」
オリビアはなんの躊躇いもなく名前を名乗り、空になったワイングラスを机の上に置く。
その姿は不気味なまでに落ち着いており、独特の色気を放っている。
「聞きたいことって、あの子たちの事かしら?かわいそうよね。人を殺すことでしか快感を持てないなんて」
「…なんでそいつらだってわかった」
「分かるわ。私が仕組んだもの。あの大量の武器や送迎用の車、あなたに依頼したのも私たちで全て準備したわ」
「…。」
Mはオリビアの言葉を聞き、口を閉ざす。
予想通りだった。依頼の時から違和感を感じていた事は全て当たっていたが、その前からオリビアは絡んでいた。
「けど、それはもう終わった事。あなたが私の所に来たのはそれだけではないでしょ?」
「…で、どういう依頼だ?お前の場合、内容によっては断る」
「ふふっ、あなたの知人であり「親」のロゼレムを殺してくれないかしら?」
「…お前今なんて言った」
Mはオリビアの発言に疑問を感じた。
「ロゼレムを殺せ」という依頼は最初から断る気だが、それよりも「親」というワードが引っ掛かる。
「…お前…あたしらの何を知っている…?」
オリビアのこれまでの行動と発言を整理すると、彼女には色々聞き出さないといけないとMは感じた。
solitario: chapter3.Countdown to Collapse「13.Secrets you don’t want us to know…①」
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