黒昼ノ夢▶【3日目】

─────…。

『おーーーーーい!起きてくださーい。じゃないとミンチになっちゃいますよ~』

耳を劈くぐらいに大きくて鼓膜の中で破裂するかのような騒音問題だったら一発で報告されるレベルの声。何となしの直観から関わるのはめんどくさそうだなと思い寝た素振りを貫いた▾

 

(しばらくの間)

 

『アレレ?起きないな…なら仕方がない、彼も食料として“解体作業”を行わねば。』

まるで猿夢のような雰囲気になれば不安に駆られ急いで起き上がった…すると、その人物と目(正確には見えないのだが)が合った▾

 

「どちら様ですか?病院内で貴方のような人物は見たことないし…」

そう。彼の見た目もそうだが、自分の現実世界にいる患者というわけではなさそうだ。だからこそ、夢の中の彼が異質に感じられたのだ▾

 

『どちらもこちらもないよ。“夢の主”である君の空想世界のキャラクターってやつだよ。僕は君の頭の中に寄生するように住み込んで働いてるってワケ。ここではタダで肉を捌き放題なんだよ。見てよこの新鮮なお肉!さっきここの壁を削いだばっかりの採れたてだよ!』

と男は嬉々として生肉を抱えて見せつける。が、ここの壁が何の動物の肉なのか定かではないし、もしかしたら人間の体内だなんて可能性もあるのに…売れれば何の肉でもいいんだろうが、そもそも買い手とか存在するのだろうか▾

 

突然天井の方から余震のような揺れが感じ取れた、すると近場にいたはずの男がいなくなっていることに気が付く。辺りを一瞥すれば、彼が簡素な木の船のようなものに乗っているみたいだ。 こちらを急かす様に手招きをしている。何やら、ここは定期的に胃液のような酸が満潮になることがあるらしい。あの揺れはそれが起こる前の予兆の様なモノらしい…彼曰く▾

 

ふと気になったので彼に「いつからここに住んでいるのか?」という質問を投げかけてみた。

『いつからという概念的なモノは定かではないが、君が眠るたびに僕らは行動できる。生きることができる。だから、君は僕らにとっては必要不可欠な“空想世界”みたいなものだ。君が死んだら僕らも死んだも同然だ。君は飽くまでも夢の中での書き手であり主人公だからね。』

なんとも規模のデカいような、責任重大じゃないかと思えてしまうぐらいにはぶっ飛んだ話だった▾

 

地面だと思っていた場所からは液体があふれ始めた。あれが先ほど言っていた酸なのだろう。先ほど剝ぎ取っていた肉はこういう時のための非常食になりえるらしい▾

 

肉ばっかりで飽きないのかな…などと考えながら溜まった酸へ顔を覗かせた。その中から手が伸びてきて自分ごと酸の海に潜り込む。不思議と痛みはなく、夜深い眠りに誘われるとそこで目が覚めた▾

 

 

急に伸びてきた手には驚きつつも、いつもよりも目覚めは良かった…がカレンダーを見れば二日も眠っていたようだった。忘れる前に彼と夢の出来事を書き落とそう▾

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不可逆

不可逆(ふかぎゃく)と読みます。主に【黒昼ノ夢】という短編小説モドキを中心としてイラストを掲載しています。絵の方がメインな為、文章はやや稚拙気味。こちらを通して双方の強みを生かせるようになりたいです。

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