妖魔捜査官 廃校の闇 第三話 怪異との出会い

ACT2-2 僕だけの探索

すると、裕翔のスマホが鳴る

悪い

僕は拾った二つのアイテムを見ていた

廃校で拾った奇妙な御札ロザリオネックレス

どちらとも不気味で、スピリチュアルな雰囲気

廃校にまさかこんな物があるとは思わなかった。

すると、裕翔が話しかける

すまんゆな俺そろそろ帰宅しなきゃいけなくなって

何かあったのか

親父だ。忘れてた、今日は従弟の家に行かなきゃいけないんだった

だからさっきの電話で、ため息混じりの声が聞こえたのか。

裕翔は申し訳なさそうに手を合わせる

だから……フィールドワークは

いいさ。親戚なら仕方ない。さっきも言っただろ。僕はこのまま探索を続けるよ。終わったらチャットで連絡する

助かる、またな!

裕翔は急いで廃校から去った。

いいところで、帰宅すればいい。

僕は気を取り直して周りを、見つめる

また、あの笑い声だ

するとおかしなことに窓が凍っていた

(いったいどうなってるんだ?)

今度は僕の両肩に違和感を感じる

まるで誰かが、手を触れたような。

背後から、生暖かい息を吹きかけられたよう

低い男の、笑い声と共に

まさか……

僕はそっと背後を見た

黒い燕尾服姿の男だ

凛とした、笑う女の笑い声も

白い着物姿の女

青白い人魂と共に、宙に浮いている

彼は手袋を手直しして、また僕の両肩に手をおく

ねぇ……私と一緒に遊びましょう?

ほう……何年ぶりの人間だろうな、頂こう

冷たい息を吹きかける女

鋭い犬歯で僕の首筋に近づける男

マジかよ

懐中電灯を強く握りしめ、僕は走りだした。

背後から声が聞こえてくる

ずっと。寂しかったから

もう逃さない。絶対に

僕は探索どころじゃなく、気がつけば外に出ていた

視えていたのか……?いや、僕は信じない

冷気と血の匂いがずっと、離れない

ACT2-3 氷の美女と夜の王

次の日。

裕翔が体調を崩しフィールドワークは一旦、中止になった。

だがある程度のネタは仕入れてきたので消えない内にメモに書いた。

僕の部屋で他に何かすることがあるかと言われたら……寝るだけか。

廃校は難易度が高すぎる。

つい持ってきてしまった一枚の御札ロザリオネックレス

これは探索で得たアイテムの重要性だといっても過言ではない。

すると、僕の目の前に青白い人魂が現れる

うわっ……⁉

思わず椅子から転げ落ちる。

すると窓際から気配がした

ふふっやっと会えたわね

そこにいたのは長い黒髪に白い着物姿の美女

透けているから幽霊で間違いない

あ、あなたは……?

私は佐久夜サクヤ。その御札に封印されていたの。出してくれてありがとう

これに……?

この御札は廃校で見つけたやつ、だがドアに貼り付けられていたのとは少しデザインが違っていた

東西南北 鬼神門怪 呪術霊淡

文字の意味は分からないが血文字のせいか、不気味な雰囲気がひしひしと伝わる

(まてよ、封印されていたということは彼女はもしや……)

悪霊なのか⁉ 勝手に拾ってしまってすまなかった! 許してくれ!

貴女を襲ったりはしないわ。だって怖がらないでいてくれたから

佐久夜は僕を見て朗らかに笑うと、すっと宙に浮き近づく

四谷怪談に出てくる幽霊のような見た目だが……。

彼女の目的はなんだろうか

私だけではないの。も貴女とお話をしたいみたいね

彼……?

すると僕の背後から何かに包み込まれた音がした。

黒い布だろうか……これはいったい。

だが所々に鉄の匂いがツンとくる

はじめまして、娘よ

な、なんだ?

僕がゆっくりと顔を見上げると……。

そこにいたのは顔立ちの良い赤髪の紳士の男だ

黒い燕尾服姿鋭い深紅の瞳口から犬歯を出している時点で察しがつく

おい、マジかよ

俺はクライヴ。お前があの棺を開けてくれたおかげで眠りから覚めたこと、感謝する

吸血鬼だ、間違いない。

僕が好奇心で開けたわけではない。

まさかあの箱がとは思わなかった。

見た目は恐ろしいがこいつも中身が違うのだろうか。

佐久夜とクライヴは僕を興味深そうに観察する

ロザリオネックレス……って、まさかお前の物じゃないよな⁉ 今すぐ返すから……

構わん、それはお前にやろう。俺が欲しいのは別にある

相変わらず声が低い、背筋が凍るほどの

廃校で聞いたあの声に間違いない

裕翔が怖がって逃げ出したのも納得だ

あなたって本当に可愛らしい。ねえ、お名前は何て言うの?

「……月城ゆな。僕は霊感もなければお前たちと慣れ合うつもりはない

ほう、そうやって強気でいられるのも今の内だ。もう決めたも同然

本当にイヤな予感しかしない。

これが夢だったらいいのに、神様は僕にすっごい意地悪をするんだな。

なぜ裕翔じゃなくて僕に好かれなきゃいけないんだ。

普通、人ならず者は僕のような恐れない心の持ち主にはよってこない

怖がりでなおかつ信じてる奴にしかよってこないだろう

なあ。二人は何者なんだ? ただの幽霊や吸血鬼ではなさそうだが

僕が質問すると二人は待っていたと言う期待の顔で嬉しそうに話す

私は元々、美術室の絵の中にいたの。子どもが欲しかった女の気がその額縁に宿った。噂でうまれた怪異そのものよ

俺はこれでも元は立派な伯爵だった。だがそれは仮の姿で本当はヴァンパイアロード。つまり吸血鬼の王ということだ。金持ちだった人間が棺を購入して飾っていたんだ

僕はベッドに向かい毛布をかける

こいつらは……本物だ

そっと毛布から顔を出す

ゆなちゃん? 私は本気で貴女のことをもっと知りたいの。優しくしてくれる人にはとり憑いちゃうから

あの時から確信した。獲物がわざわざ自分からやってくるとは思わなかった。ゆな、お前と契約して俺の眷属になるがいい

そっと僕は目をあける。

いつの間にか宙に浮いている佐久夜、右隣には添い寝状態のクライヴが

やめてくれ……僕は寝る。明日になれば夢から覚めるはずだ

この二人の人外に好かれるなんて最悪な夜になりそうだ……。

ACT2.4     眠りから覚めると、隣に……あなた

ねぇ、クライヴ。

御札の中に封印されていたときは、何も覚えていないの

私は彼女が来てくれて嬉しかったわ

ボーイッシュな女の子が言った

気のせいか?僕の思っていた御札と違っていた。そう、まるでキョンシーが身に着けるような……そんな不気味な

まぁ、興味がおありなのねとっても嬉しいわ。

今まで人間がここに現れて肝試し感覚で来ていたけど。すぐ、封印されちゃったわ。

冷たい心の持ち主なのにどうして彼女を見るとあたたかくなるんだろうか

そして彼女が御札を拾ったの!

この子ならきっと大丈夫

私はふわりと宙に浮かぶ。

今まで私を縛っていた、紐がまるでゆるりと解けるような

思わず彼女に、冷たい息を吹きかけてしまったわ

おい……なんだか寒気がするんだが。気のせいか?

いいえ私はここにいるのよこれからはあなたのこと離さないから。

ゆなちゃん、私は……あなたに恋しちゃった♬

佐久夜、それは俺も同じだ。

勇気を出して棺の蓋を開ける娘

いいのだろうか、きっとお前にとっては後悔するだろう

娘が言った

ロザリオネックレスって柄じゃないだろ。廃校にあわなすぎだ

そうだろうな、俺の姿を見たらそんなのすぐに吹き飛ぶだろう

ああ、うまそうだ。

この娘からいい匂いがする。

血を頂くのは今ではないが

だがこれくらいは許してほしい

俺はマントを翻し、娘の両肩に手をおく

首筋に違和感?いや、冗談もこのくらいに……

冗談ではないさ、俺は本気だ何のためにここまで来たんだ、お前は?

誰にも邪魔はさせない

鋭い犬歯を突き出し、味わうふりをした。

目を血走らせて、娘をよく見る。

ゆな……お前は俺の物だ!

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幽刻ネオン

はじめまして、趣味は読書(ミステリー、ホラー、怪奇小説)とゲーム(リズム、ノベル)です。最近までネットで小説をかいていました。自閉症、トランスジェンダー持ちではありますが、無理なく仕事ができるように訓練しています。スピリチュアル(占いなど)が好き。 アニメ(ラブライブ)やゲーム実況(にじさんじ)にはまってます。 紡ぎ手として様々なことに挑戦していきたいです。

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