妖魔捜査官 廃校の闇 第六話 お札とロザリオ

ACT5 僕は依頼者?

あの、リリカさん。僕はいったいどうしたらいいですか?

僕が質問すると、ナプキンで口をふく彼女に質問した

答えは簡単。このあとヒマかしら?

はい。ヒマですね

にやりと笑う、これはなんだかイヤな予感がする。

リリカさんが何を言うのか。

僕には少しだけわかる気がした

私の仕事場に向かいましょう。霊子は依頼者だからね

ついに僕を呼び捨てにした! 

僕はそっと、背後を向く。

ふわり宙に浮く、佐久夜。

今にも僕の血を狙おうとしているクライヴ。

僕は前を向き、深く深呼吸する

どうかしら?あなたの悩みは必ず解決すると約束するわ。ファイルとして記録するために

……お願いします。フィールドワークができなくなるのはもっとイヤですから

チーズケーキを最後に口に含み、紅茶を飲むリリカさんは計画通りの表情。

僕も最後のパンケーキの一口を食べる

詳しい話は、その事務所とやらで話しますよ。案内してください

その言葉を待っていたわ、任務開始ね

ふたりでごちそうさまと手を合わせ、カウンターへと向かう。

リリカさんがお会計をしている間、僕はふたりに小声で話しかける

(はっ! どうだ。これでお前たちもようやく、僕から離れて自由の身だ!)

しかし、佐久夜とクライヴの返答は思っていたのと違う

あの子。私を見て興味を示してくれたわね。そう、うまくいくかしら?

依頼とはいえ、俺たちを祓えるとも限らん。いや、貴様から離れる筋合いはない!

僕は小さく舌打ちする。

リリカさんが会計を終わらせると、手を差し出す

行きましょうか。あなたの【怪談】を聞かせて?

僕は無言でうなずいた

ACT5-2 交渉と僕のミス

数分間歩き、事務所とやらに向かう僕とリリカさん。

どのくらい歩いたのだろうか。

それよりも、今心配するべきなのは僕の安否だ

はたして僕の背後にとり憑いている女幽霊ヴァンパイアをなんとかしてくれるのだろうか

ついたわ。ここよ

おお……すげぇ

オフィスビルを想像していたが、アンティーク調の一軒家。

いや……まるで、金持ちが住んでいそうな家だった

まさかとは思いますが……自宅ではないですよね?

勿論よ。住み込みではあるけど、実家は別にあるから

理由は聞かないでおこう、この家の家賃なんて聞いたら絶対失礼極まりない。

少し安心した

さぁ、入って?

お、お邪魔します……

背後で、佐久夜とクライヴはクスクス笑いだした。

何か良からぬことを考えているような、そんな笑いが

靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。

僕は、これから面接でもするのかと同じくらい緊張してきた。

リリカさんの案内で僕は二階へと上がり、書斎へと向かう。

彼女が言うには、ここで仕事をしており父親のうけおりで後を継いでいるらしい。

あまりにも広くて僕は、息をひそめた

(椅子に、豪華なテーブル。本棚にはホラーやミステリ小説がずらりとあるな)

映画に出てきそうな、雰囲気が漂う。

僕はリリカさんを見て少し違和感を覚えた

(なぜだろう、この人が人間なのかすら怪しくみえてきた)

言わぬが花だ、ここは我慢

さぁ、霊子。あなたの悩み……いえ怪談を聞かせて頂戴

わかりました。笑わないでくださいよ。……実は

僕は、G中学で裕翔と体験した出来事を正直に全て話した

リリカさんは、黙って聞いていてメモ帳を取り出し何かを書く。

こうしてみると、リリカさんは本当にプロなんだなと実感した。

猫のような瞳に、危うく吸い込まれそうになった

……と言うわけなんです

ありがとう。なかなか面白い話を聞かせて貰ったわ

僕は背後を睨み、叫んだ

出てこい!

着物の裾がふわりとゆれ、現れた美女。

マントを翻し華麗にお辞儀をする、美男紳士

はじめまして。私は氷室佐久夜

お初にお目にかかる。俺はクライヴ・ドラクル

こうしてみると、佐久夜は大人のお姉さん。

クライヴはダンディなイケオジ伯爵だ

裕翔がびびって、フィールドワークが中止になったのは僕のせい。けれど何がいけなかったのかよくわからなかったんだ

敬語じゃなくフランクに話した

なぜなら、本音を言えるのは今しかないから

するとリリカさんが、真剣な表情でこたえた

ねぇ?あなたの身に着けているもの・・・・・・それは、廃校で取ってきたモノでしょう?

これですか?

御札とロザリオネックレスを、リリカさんに見せる

リリカさんは、ため息混じりで話す

『【わざと、拾ったわけではないよね?

違います!なんだろうな、という好奇心に耐えられなくて拾っちゃいました

いい?モノを拾った瞬間から、とり憑かれてたり、好かれたりするのよ?

リリカさんが言ったことは、ごもっともだ。

しかしフィールドワークで調べたい欲に負けた僕の自業自得でこうなった

まず、霊子はもう取り返しのつかないことになった。契約はまだしてないわよね?

ないです

すると突然、佐久夜が僕のほほにキスをした

クライヴは僕の首筋に犬歯を近づけ吸血をしていた

しまった……!

やめろ、と言わなかった僕も悪い

ふふっ。ゆなちゃん、私は妖怪だから。これからもずっと一緒よ?

ああ、甘美だ。ゆなは、優しいからな。眷属として当然だろう

リリカさんが、やれやれと首をふる。

イヤな予感はこのことだったのだろう

マジかよ・・・・・・やられた……僕の負けだ

あなたたち、本当に仲良しみたいね

僕はガックリと、肩を落とした……。

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幽刻ネオン

はじめまして、趣味は読書(ミステリー、ホラー、怪奇小説)とゲーム(リズム、ノベル)です。最近までネットで小説をかいていました。自閉症、トランスジェンダー持ちではありますが、無理なく仕事ができるように訓練しています。スピリチュアル(占いなど)が好き。 アニメ(ラブライブ)やゲーム実況(にじさんじ)にはまってます。 紡ぎ手として様々なことに挑戦していきたいです。

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