Epilogue 廃校の闇
『そう。これが、霊子が体験した【怪談】なのよね?』
「ああ……僕が話すことはあんまりないが」
過去の話をし過ぎて、霊子は疲れていた。
リリカは、それを見て楽しそうに微笑む。
友人の件、少女の未練を断ち切る件。
語り手である彼女は、自分に正直だった。
『いいファイルが読めたわ。感謝するわね』
とどめを刺す、リリカ。
依頼人の背後にいる、雪女とヴァンパイアロードは満足そうに笑う。
『フィールドワークは成功したのよね?』
「もちろん。あんたが助けてくれなかったら確実に僕は、やられていた」
リリカいわく、佐久夜とクライヴは最恐の怪異。
あれから、数日後。
G中学は無事に取り壊され、廃校はこの街から姿を消した。
リリカが捜査して、裕翔にとり憑いていた少女の霊を弔う。
天宮レイ、中学二年生。
二年前に火事で一人助からず遺体として見つかった。
リリカが言うには、雪女とヴァンパイアロードが現れなくてよかった、と。
封印が解けるのも、目覚めるのも時間の問題だったらしい。
『いい理解者になったみたいね』
「まぁ。こいつらが暴れないように僕が見張っておくよ」
友人は、廃校に行ったことしか記憶にない。
リリカは知らないところで代償をもらっていた。
「お代は?」
『いらないわ。貴女の、お友達の【あの体験】をファイルにしたから』
リリカは霊子を見てにやりと笑う。
『だから、【あなたが体験したこと】は忘れないでね?』
「肝に命じておくよ……リリカってやっぱりすげえわ」
『ゆなちゃん。私を信じてくれてありがとう』
『これで眷属らしく、ゆなを操れるな』
霊子が体験したことは、極秘ファイルとなったのだった。
なぜなら佐久夜とクライヴは、霊子を見て幸せそうな表情だから……。
『あなたのこと、離さないから』
『永遠に愛しているよ、お前は俺の嫁だからな』
「フン、うるせえよ」
リリカは何も言わず、霊子を見つめていた。
終幕
著:幽刻ネオン(色付け)