「愛しのアクアリウム」~第二話~

第二章 「シャチとの出会い」

荷物を和也叔父さんのロッカーに預けた後、茉莉華は水族館の服に着替え、シャチの水槽のある所に向かった。そこはショーも行われており、水槽の上は沢山の人が集まるステージになっていた。海も近くにあり、涼しい風がたくさん入ってくる。
「わぁっ・・・・!ここがシャチがショーを行うステージかぁ・・・・・。たくさんお客さんの席もあって、すごく広いな・・!」茉莉華はシャチショーのステージの広さと席がたくさんあることに目を丸くして驚いた。
「そうだね。シャチはとても大きいからねぇ。成長のことも考えて、水槽もステージも大きくしたんだよ。イルカショーもすごいけど、シャチショーもすごく大迫力があってね、シャチがジャンプすると大量の水しぶきが観客席の後ろの席までかかるんだ。だから夏にはピッタリなんだ。でも汚れたくない人は、専用のカッパも用意してる。」
「へぇ~。確かに夏は暑いし、ピッタリかもね。お客さんを楽しませるために、いろいろ工夫しているんだね!」
と、茉莉華は和也叔父さんの説明を聞いて頷いていた。
シャチの水槽やショーの仕組みを聞いた後、和也叔父さんはシャチについて説明をしてくれた。
「シャチは、哺乳類でクジラの仲間なんだ。体重もかなりあって、体格も大きい。主なエサはサメやクジラなど色んなものを食べる肉食動物で、狼みたいに群れで行動するんだよ。シャチは基本的人懐っこいけど、獰猛な一面もある恐ろしい生き物でもあるんだよ。そのため「海のギャング」とも呼ばれている。」と説明すると茉莉華はさらに驚いた。
「海のギャングか・・・・。ってことは、海の中ではシャチが一番強いってこと?」

「そうだね。でも他にもいろんな生き物がいるから、シャチより強い生き物もいるかもしれないね。」茉莉華の質問に和也叔父さんが答えた。
「ふーん・・・。」
「よし、それじゃあ、ここの水族館で飼っているシャチ達を紹介するね。」と和也叔父さんは言って、飼育しているシャチ達を紹介した。
「客席の前のところで泳いでいるのはメスのシャチのナミちゃんだ。年齢は30歳でお母さんだよ。真ん中で泳いでいるシャチは、ナミちゃんと同じメスのハナちゃん。ナミちゃんの娘で17歳。ハナちゃんの隣で泳いでいるのはハナちゃんの妹のナナちゃん。長女のハナちゃんは明るいけど、ナナちゃんは、おとなしい性格なんだ。15歳だ。もう一個のプールで泳いでいるのは、オスのシャチのオルタ君。年齢は31歳でお父さん。そして、茉莉華ちゃんの目の前にいるシャチは、オスのノエル君。7歳。優しい性格をしているよ。」
「じゃあ、みんな家族なんだね。」茉莉華は、あまりのシャチの可愛さに顔がにやけていた。
すると、茉莉華のそばでオスのシャチのノエルが顔を見て鳴いた。
「・・・・きゅうっ・・・・!」ノエルが鳴くと茉莉華もしゃがんで答えた。
「どうしたの?ノエル君~。餌が欲しいのかな?」

「ハハハ。ノエルは人懐っこくて甘えん坊さんだからね。茉莉華ちゃんのことが気に入ったのかな?」
「そうかもしれないですね!」和也叔父さんと笑っていると、和也叔父さんは真剣な顔でノエルの秘密を話した。
「茉莉華ちゃん、実は・・・、ノエル君は少し変わった特殊なシャチなんだ。」
「?特殊なシャチ・・・・?どこが・・・・?」和也叔父さんは、「うーん・・・。」と考えながら答える。
「実はノエル君はね、人の姿にもなれる不思議なシャチなんだ。」
「えぇっ⁉人の姿⁉そんな・・・、まさか・・・・。漫画チックなことが起こるわけ・・・・・。」
茉莉華はノエルの衝撃的な秘密にびっくりした。それも当然であろう。漫画やアニメのように動物が人になるのだから。
和也さんと話していると、後ろから人の姿になったノエルらしき者が立っていた。

「あるよ。」
突然のことに茉莉華はノエルの方を振り向いて驚いた。
「人の姿になれるって本当なの⁉っていうか、その姿他のお客さんとかにびっくりされない⁉」ノエルの秘密が本当だったことに少し心配になった。ノエルは笑いながら茉莉華に答えた。
「大丈夫!お客さんもみんな知ってるから!ちなみに人の姿になった時は、人の年齢に合わせてるから!」
「・・・・・。この現象ってノエル君以外の家族も人になれるの?」と茉莉華は、ノエルに質問した。これは確かに気になることだ。
「ううん。人の姿に変身できるのは俺だけ。俺が人の姿になれたのは、婆ちゃんの遺伝なんだ。」と意外な答えが返ってきた。
ノエルのお婆ちゃんも人の姿に変身することができるらしい。
きっかけは不明だが、ノエル曰く若い頃の人の姿になったお婆ちゃんは、噂ができるほどの美人らしいそうだ。
「君のお婆ちゃんも人になるのか。叔父さんもびっくりだよ。」これには、和也叔父さんも知らなかったようで驚いた。
「とりあえず、茉莉華ちゃんにはノエル君の担当をしてもらおうかな。この中では一番人懐っこいからね。」
「はい!わかりました!ノエル君の世話、頑張ります!泳ぎには自信があるので!」
水族館に来たその日から茉莉華は、飼育員としてノエルや色んなシャチの世話をすることになった。
「じゃあ、叔父さんは他の生き物の面倒を見に行くから、よろしくね。」と言って、和也叔父さんは他の生き物の面倒を見て回りに行った。
茉莉華はシャチの担当の他のスタッフに挨拶をしに行った。
「初めましてっ・・・・!海川茉莉華です!いろんな事情でここで働くことになりました!!まだまだ未熟な私ですが、よろしくお願いします!」
茉莉華はとても緊張していた。他の飼育員さん達はちゃんと資格を取って水族館に勤まっているのに、茉莉華は水泳は得意だけど中学生で未成年のため、周りの大人達に何を言われるのかと怖かったから。
茉莉華が緊張して震えていると、飼育員のみんなが歓迎してくれた。
「緊張しなくて大丈夫だよ。茉莉華さんの事情はさっき、館長から聞いた。本当に辛かったね。何かあったら私達をいつでも頼って!」
飼育員の優しさに茉莉華は涙が出そうだった。
「・・・・っはいっ・・・・!」歓迎をした後、茉莉華はさっそく仕事を始め、ノエルはシャチの姿に戻って水槽の中に入った。仕事内容も先輩飼育員さんから教えてもらった。
「それじゃあ、ノエルに餌をあげようかな。昼も近いしね。」
「うわぁっ・・・・!今日は俺の好きなアジだぁぁぁっ!めっちゃ食いてぇ!」ノエルは好物のアジを見てよだれを垂らしていた。
「シャチの姿でも言葉話すんだね・・・・。たくさん食べたい気持ちはわかるけど、食べ過ぎないくらいの量であげるね。」
「ちぇ~っ・・・・。」
ノエルは茉莉華の言葉に少し拗ねた。茉莉華は他のシャチにも餌やりをした。
「よし、これで全部かな!ノエル君、どう?美味しい?」
「ああ!とてもうめぇ!毎日食べたいくらい!」ノエルは満足な顔で美味しく食べていた。ノエルが満足に食べてるとこっちまで笑顔になる。するとお客さんが水槽の前にいてノエル達を見ていた。

「シャチだ!めっちゃデケぇっ・・・・!あんな身体で襲われたらやばいことになりそう!!」
「そうね。でも、普段は人懐っこいみたいよ。ふふふ♡とても可愛いわぁ。」
カップルも子連れの人たちも見ていたので、茉莉華は心が少し辛くなったのを見てノエルが顔を覗かせる。
「?どうした?子連れの人達を見て急に暗くなって…。」
「・・・・・・。」茉莉華は下に俯きながら無言になっていた。そう。茉莉華はまた親にされた事をフラッシュバックし、トラウマになっていた。
「何でも・・・・ない・・・・・。」と言って誤魔化す茉莉華にノエルは心配しながら言った。
「何でもないじゃないだろ・・・・!どうみても・・・・。抱え込もうとしないで、何があったか言ってみろよ・・・!!」
ノエルがそう言うと茉莉華は口を開いて今まであったことを話した。
「・・・・・。実はね私、幼い頃から両親に虐待されてたの・・・・・。幼稚園になる前までは良くしてくれたけど、幼稚園に入って他の子と差がついてくるようになってから両親はだんだん厳しくなって、成績が悪いと暴力や育児放棄をするようになった。両親は元から成績が良く、いい大学に入ってたからこんな不器用な私が嫌だったんだろうな・・・・・。学校にはちゃんと行ったけど、クラスメイトにいじめられた。理由は両親と同じく「水泳はできるのにどうして運動などの成績は悪いんだ。」とかね・・・・・・。先生も両親も味方してくれなかったからとても不安だった。両親とは外出もしたことなくて、親戚の和也叔父さん達と外出をしたりした。・・・・・・・。
・・・・っ!どうして、お父さんとお母さんは私に暴力をふるったりしたんだろう・・・・。私、悪いことしたのかなっ・・・・?私がもうちょっといい成績を取ってたらこういうことにならなかったのにっ・・・!ひっく・・・・っ!うぅっ・・・・・!」茉莉華は話しているうちに過去のことを思い出して涙をぽろぽろと流していた。するとノエルはまた人の姿になり、茉莉華の頭を優しく撫で、茉莉華の気持ちに寄り添いながらそばに寄る。

「そういう事があったのか・・・・。それは言い辛くなるほど辛いな・・・。茉莉華は悪くないし、よく頑張ったな・・・・。両親だけじゃなくてクラスメイトや先生も最低なクズだな!ぶっ飛ばしてやりてぇっ!!」
「だから、学校を転校しようかなって考えてる。気持ちを切り替えて新しくスタートを切りたいと思っているんだ。」
茉莉華がこれからの先の事を言うと、ノエルが意外な発言をしてきた。
「俺、茉莉華と一緒に新しいスタートを走りたい!!」ノエルの発言に茉莉華はびっくりした。
「えっ・・・⁉それはどういう・・・・?」

「茉莉華と同じ学校に人の姿で行って、人のことを学びたいし、虐める奴らから茉莉華を守りたい!!和也さんに許可を貰って、、俺は絶対に学校に行く!」ノエルが茉莉華と学校へ一緒に行く発言にさらに驚いた。
「え、えええええええええええええええええっ⁉」

ー続くー

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ましゅまろまかろん

アニメやゲーム、歴史などが大好きです!歴史は特に戦国時代が大好きです! 特技は絵を描くことと、卓球です。漫画やイラストなど、将来のために色々頑張ります!

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