※注意:この物語には一部脅かし、ホラー、流血な描写があります。また実在の団体、事件とは一切関係ありません。
Prologue ファイル2
書斎でウロウロと、ローファーをこつこつと音を鳴らす黄昏リリカ。
今回のファイルは、さすがにアレよりはマシだと思いたい。
『けれど……これは。勇気が試される話ね』
別に自分が体験したわけではないのに、文面からイメージができる。
あの子の件についてもそうだったが……。
リリカは、ため息をついた。
『これがもし解決できるとしたら。どれほど楽なことか』
このファイルも、とある学生の友人からの差出人だ。
でも仕事だから読むしかない。
『まぁ。でも、楽しませてくれるんでしょうね?』
リリカはファイルを持って読みはじめた。
ACT1 リタイア続出でも?
私、岸田相馬(キシダ・ソウマ)はうまれて初めて遊園地に行った。
今まで親に連れていってもらった経験はなく、私は姉なのでガマンしなければいけなかった。
私の家族は両親が海外で仕事していて、今は兄が二人と弟が二人いる。
つまり何をガマンしたかというと、女の子らしい遊びができなかったのだ。
そんな中、ある日友人が遊園地のチケットを当てに行こうと誘ってきたときは驚いた。
大学生にもなって遊園地なんて……もう遅いと思った。
しかし、友人はそんなことも気にせず私をけなさなかった。
「いいの? 兄弟たちを連れて行かなくても?」
「うん。弟たちはテスト期間で、兄たちは新作ゲームをプレイ。ヒマだった私が行くのも納得でしょ? それに【おつかい】頼まれてんの」
「おつかい?」
遊園地で【おつかい】なんて単語、聞いたことないだろう。
しかし私達が行くのは……。
ジェットコースターでも、コーヒーカップでもメリーゴーランドでもない。
「その【おつかい】の内容がここ」
「うわぁ……マジで?」
「そうだよ?」
そう、【お化け屋敷】なのだ。
ここは滅茶苦茶怖いとレビューの嵐が殺到していたのを調べたことがある。
心霊スポットにでもなるんじゃないかと言われるぐらいいわくつきなのだ。
和と洋をモチーフにしているらしく、プレイヤーはただ脱出すればいい。
「シンプルイズベストでしょ?しかもゴールできたら新作ゲーム機がもらえるの」
「ええっ⁉ ここって確か【リタイア続出って多くて評判】だよ?マジで行くの?」
「私はそんな程度で怖がる人間じゃない。イヤなら他のアトラクション行ってもいいのよ?」
「はぁ? 行く行く! そうまを置いていくわけにはいかないし」
「気にしないで。バカ兄弟が欲しくてしかたないの。姉の私が少しはいいところみせてやるチャンスだから」
そう、私は姉の癖に兄弟からいつもバカにされる。
ゲームが下手すぎる、勉強の教え方が雑で意味がない。
料理は上手いがスパイスの偏食が多くてイヤになる。
女子のモノを買ってきたら捨てる。
「それに証拠なんてあんの?」
「こんなこと言われたのよ……」
きっかけは遊園地に行く前の朝方。
私は、あるネットであることを調べている時にピコンときたのだ。
「あのさ! 私、アンタたちの為に新作ゲームもらってくるわ」
それを聞いた瞬間、四人は目を輝かせる。
「マジ⁉ 俺、聞いたんだけどよ。それってあの【幽霊屋敷のヤツ】だろ?」
「嬉しいなぁ。僕、【それ】欲しかったんだよね」
弟の、春樹(高2)と遊(高3)はページを見て大喜び。
だが兄の、ガイト(大3)と淳之介(大2)は文句を言いながらからかう。
「おい、そこって確か怖いって【有名な幽霊屋敷】だろ。お前行けんのかよ?」
「また【何か企んでない】だろうな? 俺はお前が少し心配だ」
そうやっていつも、文句ばっかり言っては私をバカにする。
私はそれが許せなくて、自分だけが理不尽なんじゃないかと思っていた。
少しでも、自分でもできるぞと自信がつくようにするという。
「大丈夫よ。この時の為にホラーアニメやホラーゲームなどはみて対策したからバッチリよ!」
弟たちはおおーっと喜んでいるが、兄たちはバカにしている。
「少しは私もできるってこと、証明してみせるから覚悟してよね?それじゃ、行ってきまーす」
私が出かけると、兄弟たちはまるで夢でもみているのではないかと疑っていたらしい。