ACT2 作戦開始
「へぇ……それは。納得がいく話だね」
「でしょ?だからこのチャンスを逃す手はないんだからぁ!」
わたしがやけにハイテンションなのかは、友人のあきれ顔に身をまかせる。
さて、そろそろ心の準備も出来たところで行きますか。
わたしが幽霊屋敷の扉の前に行くと、友人が手を繋ぐ。
「何で急に? コワいならムリしなくていいでしょ?」
「イヤよ!そうまに何かあったらイヤだし」
「いいから。真凛も気にしなくていいのに」
真凛は結局のところ、わたしをここに行かせる気はないようだ。
ウソをつくのが下手なんだよね、一人で行かせるのが特に。
周りのお客さんは、みんなわたしのやり取りをじっとみつめる。
「あの子たちホントに行くの?私もああなりたいな」
「ゲーム機とソフトが貰えるんだろ。な、簡単じゃねえよムリだって」
「けど、あの子たち正気だよ?」
「どうせすぐにリタイアするからさ」
(ハイハイ、そんなことを言うのだろうと思いました)
友人連れもカップルも親子も、ドン引き。
わたしは真凛の真っ青な表情に気がつき、急いで中に入ろうとした。
「ねぇまってよ!本気なの?」
「やらないで後悔するより、やって後悔するのがフツーじゃない?」
「意味分かんないいいいいい!」
所詮はお化け役、お約束もあれば仕掛けもある。
マジックでいうと、必ずトリックがあるはず。
完璧な幽霊屋敷なんて存在しない。
さっさと受付を済ませ私と真凛は中に入った。
「さぁ来なさい。どんな相手でも私が無視してやろうじゃないの!」
「ほんと……それはキツ」
真凛は今でもギブアップしそうだ。
真っ暗な床下に、まるで百物語に出てきそうな蝋燭が置いてある。
でもさ、結局コワいのって。
「そうま……マジでカッコいいよ。今日だけ……見習うわ」
真凛は今にも吐きそうな勢いで弱音を吐いていた。
懐中電灯ならぬ、スマホのライトでなんとか道にそって進む。
(早く出てきてもいいんだよ?)
予測すれば簡単なのだから。
こうして、私と真凛は探索への道へと進むのだった……。
ACT3 思わぬアクシデント?
どこまで、進むだろうか。
全然時間なんてかからないはずなのに。
お化け屋敷のことが、にわかすぎるなだけなのか、真凛はもう足がすくんでいる。
実はあの後、様々な仕掛けが現れたのだがコワがったのは真凛だけ。
私は景品のことしか、ゴールすることしか考えてないから全然大丈夫だった。
「そうま……まだぁ?」
「はぁ・・・・・・本当にマジで情けないよ?ムリするくらいなら帰ってもいいって言ったのにねぇ、馬鹿なの?」
「仕方ないでしょ⁉ そうまの肝が座りすぎているだけでしょ……」
だとしても、あんなに大声を出すまでとはいかない。
(なるほど……全てはこの雰囲気のせいでおかしくなったのか)
人間は暗闇の中にいると、一週間もしない内に視力が低下し孤独を抱える。
心理学なんてガラじゃないけど……まず講義で聞いた内容は覚えてない。
(ひとつ。またひとつ……これは負の連鎖が巻き起こしている感じかな)
「そうま。もう……私キツイかもしんない」
「……だから言ったでしょ? 難易度の話じゃないんでしょ?」
「ゲームの難易度じゃないんだからさぁ……わかってるよ」
だったら文句は言わなくていいだろうに。
真凛は自分のことをもう少し、考えたほうがいいと思う。
私は周りの空気に振り回されて、何をしなければいいか分からない。
全部の辻褄があった。
(あれか……すーっ……)
私は自分の見たものに、全てを持っていかれ……。
「って、負けないし!真凛、ギブならもう戻りなよ!私はあきらめないから」
「そうま……ごめん」
「いいよ。しょうがない。私には、プライドがかかっているんだから」
うなずくことしかできない真凛が、ふらりと倒れる。
私は申し訳なさそうにしながら次の道へと進んだ。
こればかりは、仕方ない。
すると、目の前に【何かがふと横切ったような】気がした。
見間違いなのだろうか、でも私は違和感を感じていた。
真凛は後ろから来た、スタッフらしき黒子に連れさられる。
(だからムリするなって言ったのに……今度いい飲食店おごってもーらお)
気を取り直して、私は目の前の暗闇を歩き続ける。
あまりにも静かすぎる。
さっきまでは、脅かし要素や効果音(SE)?みたいなのもあった。
おそらく、景品のゲーム機とソフトというプレイヤーの餌としてわざと。
つまり本当の目的は、自分を恐怖の底に叩き落とすこと。
(おかしい……私だけが冷静すぎるだけかな)
ここの場所は……雰囲気がある。
窓際の白いカーテンに赤い手形や意味深の数列。
きっと怪異が現れる場所だろう。
この際、妖怪だろうがモンスターだろうが幽霊だろうが構わない。
「私は、私のやるべきことをするだけ」