妖魔捜査官 忘れ去られた幽霊屋敷 第七話 心霊捜査官と私の運命

ACT9 最後のチャンス

中に入り土足厳禁のため、スリッパに履き替え二階へとあがる。

よく分からないけど緊張してきた。

顔すら見たこともない人にこれから出会うんだ。

怖い人だったらどうしよう

ここだ

書斎?ですか?

先輩は頷き、ドアを三回ノックする。

私は先輩の背中を信じて中へと入る

ようこそ。あなたが依頼者ね?

凛とした声に私はドキッとした。

見た目からして美少女だった。

ブレザー制服に警官帽。

高校生なんじゃないか、と疑う

ほら、挨拶しろ

は、はじめまして。私、依頼者の岸田相馬と言います

書斎の雰囲気より、リリカさんの姿に見とれてしまう

私は、心霊捜査官の黄昏リリカ。ちなみに、これでも成人してるわよ?

まさかの大人っ⁉ これは失礼しました

え、えと……よろしくお願いします

ふふっ。硬くならないで、リラックス。お座りなさい

失礼します

すると先輩が耳打ちする

(いいか?僕はここまでだ。あとは、相馬にかかっている)

(もう行っちゃうんですか⁉ でも、私は不安で……)

(安心しろ。全て彼女に任せるといい)

すると先輩は立ち上がりリリカさんに手をふる

すまない。僕には別件があるからこれで失礼する。彼女をよろしく頼むよ

あら、残念。せっかく霊子から怪談が聞けると思ったのに

フッ……馬鹿だな。依頼者のが風情あるだろう

先輩が私に、ウインクするとここを去った。

背後にいるふたりは、にやりと笑った。

私はドキドキしてきて、何を話したらいいか分からなくなった

それじゃあ、相馬さん?

は、はい

あなたの悩み……いえ怪談を聞かせて頂戴

吸い込まれそうな瞳に、私は頷く

そんなに面白くない話ですよ?……実は

私は真凛と遊園地の幽霊屋敷で起こった出来事を正直に話した。

リリカさんは黙って聞いていて、メモを取り出し何かを記入した。

同時にの話もした

(なんだろう……話していく内にスッキリしていくみたい)

……というわけなのです

なるほどね。とても興味深く、勇気を出した話だったわ

リリカさんは資料と思われるA4の紙を持ちファイリングする。

私の出来事をメモしたんだな、すごい……。

私は、思わず質問する

あの、本当に解決できるんですよね?

ええ。こんな興味深い怪談を聞かせてくれたんですもの。【お二人も】そうでしょう?

ジェジュンとヴォルフのことかな。

私は背後をちらっと見る

うわっ⁉」

チマチョゴリ姿の人形の妖の少女

身体が大きく顔と腕に縫い目がある怪物の男

あら……霊子のときよりはマシなヤツね

はじめまして! わたし、ジェジュン!

よぉ、俺はヴォルフ

私は急に目の前に現れたふたりに驚き椅子から転げ落ちる

いたたぁ……ビックリしたわ

ごめんね、そうまお姉ちゃん

ハッ!いい顔してるじゃないか

別に……いいけど

すると突然くすっ、と笑うリリカさん。

ごめんなさいっ……ふふっ! あなたたちって……仲がいいのね……ふふっ

だ、大丈夫ですか?

リリカさんは、『気にしないでとでもいう表情で左手でごめんの合図をとる

な、仲良くは……ないです

そんなことないでしょ?だって、そうまお姉ちゃんはわたしに優しくしてくれたの!

ああ。ソウマのようなプレイヤーは、はじめてみたぞ。俺が見てきた奴はみな、恐怖に満ちていたからな

いや、普通はビビッて引き返すでしょうに。

肝が座りすぎている私が珍しかったのね

お二人にとって相馬さんは大切な理解者なのね?

するとジェジュンは宙に浮いて、ヴォルフは大きな手で私を抱きしめる

もちろん!とーっても幸せなんだから

こんな人間、奇跡のような存在だからな!

あなたたち……

なんだか悔しくなり、何も言えなくなった。

ACT9-2 解決の鍵は夢の中

それで、リリカさん。どうしたらこの問題は解決できるんですか?

そうね……あなたには少しつらい事を言うかもしれないけど

急に冷静になったリリカさんを見てジッとふたりをみる

そもそも。あなたは幽霊屋敷に入ってただゴールしただけそれから?

え?

なんだろう、この気まずい空気は……。

先に言っておくけれど、私は祓う専門じゃないの。交渉やうっとうしい霊などは追い出せる。けど、あなたのは……違うわよね?

確かに、私はただ幽霊屋敷の中を探索しただけであって悪霊レベルかと言われたら……。

ちょっと違う気がする

ちなみに、さっきの霊子に憑いていた彼らは最恐最悪の怪異。彼女が責任をもって対処するらしいわ。自業自得よね

先輩に何があったかは知らないけれど、大変な目にあったのは間違いない

呪われた人形でも残虐な醜い怪物でもない

可愛らしい女の子とハンサムな渋い男性だ

けど……それは本当の姿

あの。ジェジュンとヴォルフは本当に悪いヤツじゃないですよね?

確かめたい?それなら良い方法があるわ

すると、リリカさんは棒でヒモにぶら下がっている五円玉を取り出す

まさかっ⁉

あなたの場合はこの方法でいいのかもしれない。夢の中で自分をみつめ直すの

それってつまり……あの夢よりもっとヒドイということ?

リリカさんは、真剣な表情で言った

夢の中は、己を試すためのステージでもあるの。けれどその代償として精神を使うの。覚悟の上で言っているのよね?

リリカさんが言っていることは、間違ってはいない。

それにこれ以上、真凛や兄弟に迷惑をかけるわけにもいかない。

だったら、ここでスッキリしてもらおう

……はい。何も知らないのはイヤなので

素直ね。じゃあ、はじめてもいいかしら?

……お願いします。おいで、ジェジュン。ヴォルフ

わかった!

お安い御用だぜ

私たちは五円玉を見つめた。

ゆっくりとゆらす

あなたたちは今……幽霊屋敷にいるわ。それも本物の……

リリカさんが笑う

さぁ、ここからは勇気を出す時間よ。無事に帰ってこられるといいわね

ウトウトしてきて……私たちは眠ってしまった

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幽刻ネオン

はじめまして、趣味は読書(ミステリー、ホラー、怪奇小説)とゲーム(リズム、ノベル)です。最近までネットで小説をかいていました。自閉症、トランスジェンダー持ちではありますが、無理なく仕事ができるように訓練しています。スピリチュアル(占いなど)が好き。 アニメ(ラブライブ)やゲーム実況(にじさんじ)にはまってます。 紡ぎ手として様々なことに挑戦していきたいです。

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