ACT9-3 人形の試練
目が覚めると、私は古ぼけた屋敷のドアの目の前にいた。
廃墟のようで……不気味な感じ。
西洋の建物?映画に出てきそう。
私は無意識にドアを三回ノックする。
すると、ギーッと耳障りな音が聴こえ思わず耳をふさぐ。
(何これ?もしかして私、試されてる?)
主人公みたいで、自分が今から冒険するんだと考えれば妥当か。
(ホントにこれで、解決できんの……?)
とりあえず、中に入りいつの間にか持っていた懐中電灯のスイッチを押す。
光が暗闇を照らし道ができた。
これが、探索する人の心情か。
「どういうことだろう」
思わず心の声が出てきた。
すると、どこからか鈴がころんと落ちたような可愛らしい笑い声が響く。
私は思わず身体が動かなくなっていた。
どうしてだろうか、今まではこんなことなかったのに。
足がすくむ……え?
『そうまお姉ちゃん。わたし……ジェジュン』
見下ろすとそこには、ジェジュンが私の足を掴んでいた。
「何?いきなり……」
『思ったの。わたしはずっとひとりだったから・・・・・・でも、あなたがいればわたしはさびしくないの!』
いきなり大声でクスクス笑うジェジュンに私は驚く。
身体が動かない。
まさか……。
「ねぇ、ジェジュンはあの時、幽霊屋敷に【ずっと】いたの?」
『ううん。わたしのことが気味が悪くて置いていった子がいた。捨てられたから……』
物には魂が宿る、人形はまさにそれだ。
「捨てられた?それって本当なの?」
『ウソじゃない。わたしは何も悪い事してないのにっ』
数多の白い手が見えてきてきた!
「うわっ⁉」
無駄な力が抜けたのか、すぐに走りだす。
彼女が追いかけてくる。
『どうせ、わたしは【呪われた人形】なんでしょ? だったら……コワがってよ!』
どんどん可愛らしい姿から、おぞましい姿へと変化する。
なんなら人に近い、小学生くらいの女の子になっていた。
『わたし、ジェジュン。いま……あなたの背後にいるの』
とりあえず……逃げよう、うん。
ACT9-4 怪物の明かされる真実
「はぁっ……はぁっ……はぁっ」
なんとか逃げ切ることができた私は別の部屋へと隠れた。
ここは……研究室?
アトラクションなら、不気味な薬品や雷が鳴ってもおかしくない。
でもここは夢の中だ。
あるモノに目がいく。
そこには、鎖で繋がれている高身長な男がいた。
眠っているところを起こしたらまずい。
(うっ……薬品の匂い。こんなキツかったっけ?)
遊園地の幽霊屋敷よりも、ここはもっと不気味だった。
私はいつまで冷静でいられるか不安になってくる。
散乱しているイス、研究資料と思われる紙が床に落ちている。
「本当に大きい。どのくらいあるのだろう?」
私は好奇心で彼をまじまじと見る。
「……大きいな。軽く二メートルはありそう」
その時、雷鳴が轟き思わず私は耳をふさぐ。
刹那、鎖が解き放たれ男は大きな声で唸りだした。
地の底から這い上がるような低い声が聴こえる。
『よう、ソウマ。ヴォルフだ』
ゆっくりと大きな足音を立て、私に近づく。
「わっ」
『驚いたか? 無理もない。だがな、まだ俺は諦めてないぞ』
うっかり懐中電灯を落とし、私は固まった。
ヴォルフの大きな手が伸びてくる。
『正真正銘、【本物】だ。なぜ、俺を恐れない?答えろ』
「反応に困るよ……私は」
怪物が目の前にいるのに、フツーの人なら即失神。
真凛が見たら絶対に泣き叫んで、私を置いていくだろうな。
「わからない。平気なんだと思う」
『そうか。ならば証拠を見せてやる』
ヴォルフが私を掴む。
力強く、まるで握りしめられる感覚。
「ねぇ……ヴォルフ。あなたって……いったい何者?」
すると彼は、声をあげて低く笑う。
『教えてやろう……フランケンシュタインの怪物はな。【死体を繋ぎ合わせた人造】だ』
人体実験……イヤな予感がしたのもわかる。
「か……可愛そうに」
『そうだろう?ソウマは馬鹿正直で純粋な人間だから助かるぜ』
わたしはふらふらと、身体がいうこときかず彼を疑う。
『さあ!共に俺とずっと添い遂げようじゃないか!』
全身に電流が流れ、私は叫んだ。
「うわああああああああああっ!」
ヴォルフは満足そうに笑った。
思いっきりここから抜け出そうと、私は抵抗する。
こうなったら……猫のように噛みつく!
『ぐっ⁉ おのれ、ソウマ!』
「うぇ……サイアク」
痛そうな表情のヴォルフが、するりと私を離す。
床に落ちて、痛みを感じる。
「うっ……」
静電気でも喰らったかのように、身体に痛みがはしる。
ヴォルフがゆっくりと私を覗き込む。
『だったら、お前も俺の一部にしてやろうか?』
トドメの一撃をくらい、私は逃げ出した。
(あいつ……ヤバすぎるっての!)