心霊捜査官 禁断のファイル リリカメタモルフォーゼ

ACT9 違和感

とても静かな教室でただ一人、うつ伏せに。

珠莉がゆっくりと目を醒ます。

そこには見覚えのあるクラスメートたちが。

けれどここは、おかしい。

会いたいのにいない。

リリカちゃん……助けて

怖くて怖くて仕方がない。

ここから出たいのに。

彼女たちはそれぞれの男性と幸せそうに付き合っている。

おまじないなんて、しなきゃよかった。

全部わたしが悪いんだ。

リリカちゃんだけは、いつも元気をくれる優しい子だった。わたしには叶えたい夢があったけど。それもまた……」

またそうやってお前は、弱音を吐くんだな

迅が宙に浮きながら、珠莉をみつめる

ビクッと珠莉が身体を震わせる

こんなの間違っていたんだ。……あの子たちに明るく振舞うなんて

俺はお前を護るって言ったのに拒むのか

絶対、リリカには言えない。

頑張りすぎたのも、振舞っていたのも全部。

わたしが普通の子で、特別じゃないから……

諦めようかなと思ったとき。

やっぱりここにいたのね

聞き覚えのある声だ。

もしかしてと、声のした方に向く

あ……!

制服姿に、金髪のロングヘアー。

けれどなぜか警官帽をかぶっている。

目が真剣でまっすぐな眼差しだった

リリカちゃん!

けれど迅は珠莉にとり憑いたままだった

全て、聞こえていたわ。あなたの叫び

リリカちゃん?

ねぇ、珠莉……

リリカが睨みつけながら言った

いえ、あなた。【怪異】ね?

珠莉は言葉を失った。

リリカは迅を見つめる

そして灰神迅、あなたは……欲深き女生徒が呼びだしてしまった怪異なのでしょう

どういうことだ?

リリカはこの廃校まで来る時に、違和感にきがついた

それは下校途中

すみません。三年C組に、桜宮珠莉さんという生徒を見かけませんでしたか?

担任の先生に話を聞く

桜宮さん……?そういえば最近学校に来なくなったのよ

どういうことですか?

体調を崩してしまってね。そういえば、黄昏さんは幼馴染なのよね?何か知らないの?

いえ、全く……

それ以降、珠莉が学校に来なくなった

じゃあ今ここにいる彼女は?

あ……

リリカはしゃがみ込み、手を差し伸べる

珠莉を今まで護ってくれたのね

ああ

珠莉の身体から、黒い煙が現れる

迅は珠莉を襲ったのではなくて身体を護っていたのだ

黒い煙は人型になり、少女の姿へとなった

ACT9-2 決別と交渉

ごめんなさい、わたしが彼女にとりついていたの

どうしてこんな事をしたの?

珠莉ちゃんの身体が危なかったから。不幸体質はバレバレだったね

小学生時代から幼馴染でアクティブ少女な珠莉

実は幸運の持ち主だった

しかし、珠莉はごく普通の少女

それにリリカは、窓際で低い声を聞いた。

あの青白い着物姿の青年を

……あなたは、珠莉をお願い

お前。なぜ……俺を?

女の勘よ

たしかに、珠莉には【もう一人のヤツが憑いて】いた

けれど彼は、守護霊のように強かったので見た目が恐ろしいだけ

交渉を続ける

いい加減、珠莉のことは諦めて

どうして?彼女は彼を怖がっていたのに

リリカはため息をつき、置いてある壊れかけの占い板を拾う

彼女は、珠莉に残酷な現実を教えようとしたかもしれない

けれど、それは許されたことじゃない

代償は償ってもらう

ああっ⁉ やめてっ。もう……珠莉にはとり憑かないから……

ゆっくりと、リリカは涙交じりで唱えた

エンジェル様、エンジェル様。どうかお帰り下さい。数多の甘き幻と。そこにいる彼女の心を喰らったものに罰を!

すると少女は苦しそうに絶叫をあげながら占い版の中へと吸い込まれた。

幻影である女生徒たちは、煙のように消えた

そして、吐き捨てるように言った

二度と、私の親友に傷をつけないで

同時にリベリオンが背後から現れて、占い版を叩き壊した。

珠莉に憑いていた忌々しい霊はもういない。

今まで接していたのは本当の珠莉じゃない。

リリカは一番それを理解していた

本当に覚悟を決めたんだな。娘らしい

信じたくはなかった、まだ交渉は終わってない

リリカは迅の方を見る

「・・・・・・あなたはおまじないで現れた怪異じゃないずっと珠莉に憑いていた者ね

よく分かったな。ああそうさ。俺は珠莉と一緒にいたかっただけさ

だが、それが珠莉君を苦しめ、不幸体質が収まらない。欲深き男だ

迅の願いは珠莉そのもの

私は中学の頃に、あなたの声を聞いた。本当に愛していたのね

迅は強く頷いた

桜宮珠莉の人柄が、本性が

本当の彼女はただ寂しがりで強がっているだけの女の子

なぜ否定しないのか。俺は化け物だぞ?

いいえ。あなたは化け物なんかじゃない。あなたの願いはじきに叶うから

リリカ……。俺は人間になって、珠莉を護りたい。ただそれだけだ

迅の本音が聞けただけでも、リリカは満足した。

血塗れは飾り、ただ醜いだけの生霊のようだったが。

リリカは珠莉の心の中を聞いた

(……さびしいよ。ひとりにしないで。わたしを……)

ほら、珠莉はあなたを求めているでしょう?

『……そうだな

迅の姿が徐々に見えてきて、まるで生き返ったようだ。

彼は珠莉を抱きながら、切なく笑う。

サンキューな

珠莉をよろしくね……

ACT10 自分を守るために

気がつけばリリカは、リベリオンの腕の中で泣いていた。

我慢ができなかった。

リリカが今まで話していたのは、珠莉じゃない

彼女に憑いていた霊そのもの

元から、親友なんていないも同然だった

「……さぁ、代償でもなんでも貰いなさいよ

既に頂いたさ。お前の騙されやすい甘い心をな……

珠莉は今頃、記憶を迅に消され自分の存在を知らない。

リリカは涙を拭いた

「……お母さんを助けにいきたいわ

胸騒ぎか?随分と余裕だな

ここにいても嫌な気分になる。

私達は、校舎を後にした。

もしかしたら、今の自分は冒険がしたいんじゃないかと

一筋の光が見えた気がした。

霧島刑事には、任務完了したと報告した。

珠莉はしばらく入院することになった。

義父の付き添いで、誘拐の誤解は解けたようだ。

迅は彼氏だと伝え……珠莉を誘拐犯から護っていたと話したらしい

霧島刑事がうまく力を使い事を穏便に済ませたらしい

一方、二人は仕事を続ける

……ここなの?

そのようだ。教会はあまり好かんがな

教会から微かな霊気を感じる。

ここに入った瞬間、真実を知ることになる

開けるわよ

ああ

ゆっくりとドアを開ける。

人気のない静かな礼拝堂。

天井にはチャペル式の土台が、左側にはオルガンが置いてある。

クリスマスも近いのか所々に飾り付けが目立つ

しかし違和感をここで感じる。

口づけの音、水が滴る……。

そこにいたのは。

お母さん!?

これは

音が消え、真下を見ると白いワンピース姿の綺麗な女性がぐったりとした姿勢で倒れていた

彼女は苦しそうだが、どこか満足しているようだ

安らかな表情にも見えてしまうのが

まさか……未来予知の子どもとは

「……そう

騙していたのだな。アリスは

お母さん……黄昏有栖の力そのもの

(リリカ……ごめんね。私は母親失格よ。あなたを愛していることに気付いてあげられなくて……)

(全ての謎が解けた……みたいね)

騙されやすい……か

リリカは有栖の弱き心に黙とうした。

リベリオンはそれに気が付き、リリカをマントで翻し隠す

(そんなことない、私は。……お母さんが幸せならそれでいい)

リリカは覚悟を決めていたのだ。

リベリオンと共に、生きることを

さようなら安らかに光へと……おやすみなさい……

良い魔界への旅と。行こうか

するとリリカの顔つきが、【大人へと変化していた

Epilogue 

だからイヤだったのよ

過去は変えられない、例え残酷な出来事でも。

失った友人に母親

それでも、彼女はこの仕事をやめるわけにはいかなかった

俺はまだリリカを諦めたわけではない、アリスの血は受け継がれる

ええ、呪われた血がね。……ねぇ、お父さん

彼女はファイルを閉じ、彼を見つめる。

今日ぐらいは素直になってもいいのかもしれない

今日は、一緒に寝てもいい?

勿論だ。リリカは俺の可愛い娘だからな

「……ありがとう。お父さん

ああ、リリカ

彼女のテレパスの能力が弱くなり、霊感が強くなっていった。

それでも、この二人は諦めない。

また普通の生活に戻ったとしても。

優秀な娘と父に変わりはないのだから

ねぇ、知ってる?心霊捜査官がなんでも相談に乗ってくれるって

でも気を付けて、その人は代わりに代償をもらうらしいよ

どんなオカルトな事件を解決してくれるけど

もしかしたら、きっとどこかで見守っているのかもね

終幕

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幽刻ネオン

はじめまして、趣味は読書(ミステリー、ホラー、怪奇小説)とゲーム(リズム、ノベル)です。最近までネットで小説をかいていました。自閉症、トランスジェンダー持ちではありますが、無理なく仕事ができるように訓練しています。スピリチュアル(占いなど)が好き。 アニメ(ラブライブ)やゲーム実況(にじさんじ)にはまってます。 紡ぎ手として様々なことに挑戦していきたいです。

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