※この物語にはホラー、流血表現が含まれます。自己責任でご拝読ください
※アイキャッチ:Canva マジック生成で制作しました
Prologue
なんの為に今この仕事をしているのか。
私は思った。
書斎に行けば当たり前のようにファイルを読んで現場に行くかを決めるだけ。
心霊関係、失せモノ探しなど。
天職かと思われたらそれもまた違う。
自分は母のテレパス能力の意志と、父親となった魔王の流れる血を継ぐ。
これ? 黒いブレザー制服に赤いスカーフ、頭には警官帽をかぶっているの。
所属は【心理心霊課 サイキック・ファンタズマ】。
送られたファイルを読み、語り手が事件にあったのかを捜査する。
だけどその裏は、幽霊、妖、魔、怪異を捜査している特殊な仕事。
代償は、依頼者の怪談。
「なんて……今更すぎるかしら」
フツーの女の子として過ごしていくはずが、闇の世界に住む妖魔を断ち切るなんて。
(探偵より、警察よりもめちゃくちゃ大変なお仕事なの)
今日も依頼者が現れる気配は……ないと思っていた。
ガチャリと、書斎のドアの音が響く。
「廃校事件、幽霊屋敷事件……その次はいったいなんでしょうね?」
隣には、優雅に座る父親の姿が。
彼は魔界から追放されたヴァンパイアの王。
リベリオン・ファントム。
私の因縁ある過去と決着を付けて、契約した。
怖いけれど、意外と優しい。
父親がいるなんて、こんな感じなのかもしれない。
ゆっくりとドアの方を見る。
「ようこそ。心霊捜査官へ。さぁ、あなたの【怪談】をきかせて?」
ACT1 違和感
「失礼しまーす……」
緊張して震える男性の声がドアから聞こえてきた。
リリカは、椅子から立ち上がり彼の方へ向かった。
「こんにちは。ここに来たということは依頼かしら?」
「は、はい。俺……友木裕翔(トモキ・ユウト)です。大学三年」
青年の名前を聞いてリリカはピンときた。
ああ、そういえば彼の怪談を代償にした子だった。
「あなたが……霊子からきいたわ。こうして対面で話すのは初よね?」
「はい。あの時は、月城に迷惑かけてすみません。リリカさん」
純粋で真面目な印象、彼女の言う通り裕翔は好青年だ。
でも……まずは。
「ふふっ。緊張しているのね、座りなさい。紅茶を入れるわ」
「いいんすか?……すみません」
リリカがにこりと微笑むと、裕翔は安心した表情になった。
しかし、裕翔の身体にまとわりつく鎖が気になってしかたがない。
余計な事は言わずに、まずは彼の話を聞くことにした。
「気にしないで。それより何があったか聞かせてくれる?」
「ああ。……実は」
裕翔の話に耳を傾ける。
『大学の帰り道によく通る洋館……あそこから【イヤな感じ】がするんですよ。俺は前回、月城とG中学に行ったときの感覚を覚えているんですが。けど今回はそれ以上だ。そんなある日、リリカさんと同じ心霊捜査官と名乗る人が協力してやると言ってきたんだ。言われた一言でゾッとしたんだ。『君は、あの場所で大事な忘れ物をしたらしいな。それも罪悪感を引きずるくらいのヤツを』。結局、何を言ってるか分からなかったですね。以上です』
リリカは、心霊捜査官が他にもいると聞いて驚いたのだ。
上からは何も言われてないのに。
「なるほど。それで、一応念のため私にも同行してほしいと?」
「はい。リリカさんの他にも【捜査官がいたのは初耳】でしたが。ご存じでしたか?」
「いいえ。……ちなみにその人は最後なんて?」
一瞬、裕翔が身震いして顔を青ざめる。
「……たしか、『俺に協力すれば、代償は【体験したことそのものの記憶】でチャラだ』って……」
リリカは思わずリベリオンを見つめた。
(お父さん、これって)
(こいつは。魔の気配がするな)
私は少し不安になった。