ACT6 今度は三人に別れて探索だ
六人になって、探索が賑やかになってきた。
普通の人間は私、裕翔、美麗。
魔族は父、マーク、……亨も妖しい。
これならどんな者が現れようとも怖くない。
結局、ここにまだ行方不明者がいないか捜査する。
私はあることを閃いて話した。
「ねぇ皆。ここからは三人で別々に行動しましょう。増えたとはいえ、あくまで捜査だから」
「大丈夫かな?誰と一緒に行動するの?」
美麗が不安げに震えると珍しく裕翔が手をあげる。
「だったら、こうしないか?俺は美麗ちゃんとマークさんと行く。リリカさんたちはリベリオンさんと亨さんと行動したほうがいいと思います」
「随分と大胆に提案してくれたな。俺は構わないぜ。リリカと行動できるなんて最高」
『さすが裕翔君だ。娘を俺に預けて貰っても大丈夫だぞ』
『僕も賛成だ。メイリーを独りになんてできない。裕翔は天才だね』
満足そうに冷静組は頷いている。
私と美麗はひそひそと話し合う。
(きっと裕翔君があなたを護ってくれるはずよ。マークの誘惑に負けないで)
(明白了(わかった)。リリカちゃんを信じてみる。なんだか……裕翔君がカッコよくみえてくるな)
さっきまでビビっていた裕翔、女の子がいると護りたい気持ちが強い。
美麗に憑いているマークは、今は優しくても豹変して襲う可能性もゼロではない。
「裕翔君、頼むわよ。あなたの霊感を頼りに彼女を護ってあげて」
「任せてくださいよ!今度は俺が恩返ししなければいけないからな」
おそらく友人の件だろう、あの子も真実を受け入れたから。
私は知っている、努力する依頼者や純粋な人の輝きは素晴らしい。
「くれぐれも気を付けて、慎重に捜査を開始するわよ」
『おーっ!』
亨だけは私を見つめ、面白くない表情で睨みつけていた。
ACT6-2 吊り橋効果?
【裕翔、美麗、マーク サイド】
「そういえば、美麗は何か能力とか使えるのか?」
俺が疑問に思い美麗に聞く。
どんな返答が来てもビビらないぞ。
「うーん。能力は使えないよ。フツーの女子高生です」
よかった、俺が求めていた回答だ。
この中で一番俺が浮いている、彼女が普通の人間で安心した。
「そっか。俺は霊に好かれやすい体質なんだよ」
「似てる!わたしはとり憑れやすいみたいなの。仲間だぁ!」
正直嬉しくない仲間だが、美麗を困らせるわけにもいかない。
ここはおとなしく黙って身を任せよう。
広い部屋に入り、何があるか探索中だ。
すると、マークが俺に聞いてきた。
『裕翔君。君に問いたい。なぜ僕を見ても驚かなかった?』
「ああ……。前に似たような不思議な体験をしたんだ。だからそれを見て慣れた感じかもな」
あの時は自分でも驚いて、何をすれば解決に導けるかと血迷っていた。
正直……あんまり覚えていない。
俺は適当に誤魔化して愛想笑い。
「ははっ……だから気にしないでくれ」
『不思議だ。メイリーはとても怖がったのに』
「は、恥ずかしいから。やめて」
美麗も肝が座っているわけではなさそうだ。
友人ができたみたいで少し嬉しくなる。
だけど俺はマークの事を信用したわけではない。
少し脅してみた。
「なぁ。マークはなぜ美麗にとり憑いたんだよ?」
『彼女は昔の愛人に少し似ていてね。やましい事は別に考えてないよ。インキュバスではあるけど、僕は騎士としてメイリーを守護するだけさ』
純粋なイメージで性格通り、確か夢魔ってヤバイモンスターじゃないかと。
騙してるみたいで、怪しい見た目だ。
美男で騎士は飾りなのか……。
「あの?裕翔、どうしたの?」
「ああ、なんでもないよ」
俺のイメージしていた夢魔とは大違いだ。
だけど、愛人に似ているなら既に……いやいや何を考えているんだ。
『僕は裕翔君と仲良くなれて嬉しいよ』
耳元で囁き俺はドキッとした。
でも俺は、美麗を守らなければいけない。
「探索を続けるか……」
「おーっ!」
マークは何も言わずただ微笑んでいた……。
【リリカ&亨&リベリオン視点】
一方、私たちは遊戯室を捜査していた。
相変わらず亨は私を見つめ何か企んでる顔だ。
父も魔王だから何かに気づいているはず、どうせ私の血が目当てだろうけど。
「今のところ何も変化ナシね」
「つまんねぇの。なーんか面白いこと起きないかな」
『ならば君が起こせばいいだろう。亨君』
父の発言に亨は戸惑う。
すると彼の包帯が取れてきて私は思わず手を口に抑える。
「……なにこれ」
亨の腕にまかれていた包帯の中身はタトゥーのような紋章が。
父はニヤリと笑いながら興味ぶかそうに紋章を見つめる。
『それは魔界で見たことある紋章だな』
「あなた、いったい何者なの?」
亨は大きなため息をついて観念したような表情で私を見た。
オーラがすさまじい、黒い煙のような。
「俺さ……魔人なんだよ。親父が悪魔なんだ」
「どういう事?亨は人間なんじゃないの?」
「魔界で一番強い狩人なんだよ。ハンターだ。リリカの親父さんみたいな感じでね」
『その紋章だと……ルベルクか。人間の母と悪魔の父のハーフだな』
ルベルクという単語を聞いて、亨は強くうなずく。
狩人ということは……悪しき何かを狩ることだろうか。
私は質問を続ける。
「亨。ルベルクってなに?詳しく聞かせてくれないかしら」
「面白い話でもねえぞ?まぁ、裕翔たちには内緒にしといてくれや」
私とリベリオンは頷き、亨は語り出した。
なぜあなたが心霊捜査官になったのかも知りたいから。
『俺の母、【白夜凛音】は小学校の先生で、父は魔界の狩人【ギャザー・ルベルク】。簡単に言えば魔界にいる悪いヤツを懲らしめる仕事をしていた。今は人の姿で心霊捜査官をしている。俺は親父に誘われて所属したんだ。狩人の血が流れているということは五感も優れている。母が生徒にとり憑いている魔を助けて親父が現れた。正義感が強くて優しい母と自由気ままなハードボイルド気質な親父にね。ルベルクは現世にはびこる妖魔を監視する力を持つ家系さ。魔法は使えないけど』
亨はギャザーの血を受け継ぎ、凛音の正義感があるから今がある。
親は子に似ていると言うが……彼は私が想像した以上に肝がすわっていた。
「疑ってごめんなさい。亨が苦労しているなんて……」
「お世辞はいらねえよ。リリカは絶対にその程度で心折れるはずないなと思ったが」
『娘はまだ思春期なんだよ。素直になれないだけだからな』
父には頭があがらない。
私は顔を赤らめ亨に言い訳する。
「違うのよ!誤解しないで、別にあなたは男性なんだからそこまで心配してないというか……」
亨は笑いだし、ダーツ盤に勢いよく矢を射止める。
そんな器用な事ができるなんて……。
「リリカはやっぱり【人間】なんだな。羨ましいぜ」
いや、気のせいだと思う。