第五章 「初デートで急接近⁉」
休日の朝。涼しい浜風と太陽の晴れやかな日差しで目が覚める。小鳥の囀りも聞こえてくるまぶしい朝だ。茉莉華は、眠くて重い身体を起こして背伸びをする。
「ふわぁ~・・・。もう朝か~。もうちょっと寝たいところだけど、今日はノエルとの大切な初デートだし、気合い入れてこ!」と茉莉華は鼻歌を歌いながら身支度をした。心はルンルンとドキドキでいっぱいだ。
「ノエルはどういう服が好みかなぁ~。スカートかな?それとも大人クールなズボン?女性らしくスカートでいこっかな。髪はいつもと違う雰囲気で、ハーフアップにして、メイクはコーラル系で自然に!よしっ!これでバッチリ!」服装も髪もメイクもセットアップし、朝食を食べ、水族館にノエルを迎えに行った。

ノエルを迎えに行く時は、必ず開館前のお客さんのいない時間に行く。ノエルはとっくに人の姿に変身し、水槽の前で茉莉華を待っていた。
「おっ!茉莉華、おはよう!先に水槽の前で待ってたぜ。」
「ごめん、ごめん。メイクや服選びに時間がかかっちゃって・・・・。」ノエルは、いつもと違う雰囲気の茉莉華を見て少しドキッとしていた。
「今日の茉莉華、いつもより大人っぽくてか、可愛い・・・。似合ってる・・・。」
「そうかな~。今日は、せっかくの初デートだからね。ありがとう。さて、家に戻ってノエルもカッコよくオシャレしないとね♡」
「お、おう。」茉莉華はノエルの手をとりながら家に戻り、ノエルをイメチェンさせた。服は、和也叔父さんが人間姿のノエルのために買ってきてくれた若者らしい服だ。ムスクの香りの香水や男性用化粧品もおいてある。
「さすが和也叔父さん。準備が早い!メンズ用の化粧もあるんだね!」
「人間姿でショーをする時によく使ったりしているんだ。」
「へぇ~。人間姿でショーか~。今度私も見てみたーい!」とお喋りしながらノエルの身支度を進めていった。そして準備も終わり、」二人は家から出た。
「うわぁ~。ここが水族館の外の世界か~。いつもは、水槽にいるから、陸の世界は学校以外初めて見るぜ!」
「そうだね!ここは海も近いし、空気もおいしい!でも車とか色々通っているから綺麗な空気とはいえないか・・・・。」
「ま、せっかくの初デートだし、思いっきり楽しもうぜ!」とノエルは、テンション高めにニコッと笑って言った。
「そうだね!ノエルとショッピング楽しみ♡」茉莉華も笑顔でノエルに言った。二人は恋人繋ぎして話しながらバスや地下鉄に乗り、ショッピングセンターに着いた。
「休日だからか、人もすげぇーな!人間達の娯楽ってすげぇぇぇっ!」
「あはは、そりゃ大きな店だからね。さ、色んなところ見て回ろ♡」と茉莉華ははしゃいでノエルの手を取り、見たいお店に向かった。
アパレルショップでお互いに似合う服を見たり、おそろいの雑貨などを買ったりした。そして時刻はあっという間に昼になったので、イタリアン料理店で食事をすることにした。
「こ、これが人間の食事・・・・!餌・・・・!」
「美味しそうでしょ。っていうか、ノエルの食べる量多すぎ…w」
ノエルは初めて見る人間用の食べ物に目を光らせて食べたそうによだれを垂らしながら見ていた。ノエルはシャチなので、食べる量も凄かった。エビのクリームドリアを2つも頼んで食べた。さすが海のギャング。食物連鎖も一人前だ。
「凄い食欲・・・・。シャチってこんなに食べるんだ・・・。まるで大食いタレントが近くにいるみたい・・・・。」

「へへっ!俺達シャチは、サメやクジラなど沢山食べるんだぜ?」とノエルは、茉莉華にドヤ顔で言いながらモリモリ食べた。茉莉華もドリアが冷めないうちに食べた。昼食も食べ終わり、昼食と共に注文した食後のデザートが運ばれてきた。いちごがてんこ盛りのアイスが乗ったパフェだった。茉莉華は美味しそうに笑みを浮かべながら食べていた。
「う~ん♡いちごマシマシアイスパフェ、めっちゃ美味しぃ~♡ずっと食べたかったんだよね~!」嬉しそうな茉莉華を見てノエルも笑顔になった。
「茉莉華は美味しそうに食べるなぁ~♡苺いっぱい頬張って、笑顔になって。さすが女子だな。・・・・?茉莉華の口元にクリームがついてるぞ?」とノエルは茉莉華の頬をジーっと見ていた。
「ノエル?どうしたの?私のほっぺばかりジーっと見て。何かついてる?」と茉莉華は口元に何かついていないか頬を触った。
「そこじゃないって・・・。ほら、取ってあげるからじっとしてろ。」
「え、ちょっ、クリームくらい自分でとれるから!子供じゃないし!」
「いいから。」とノエルは言って、茉莉華の席の方へ前にのめり込み、指で茉莉華の口元についているクリームをひょいっと取ってペロッと舐めた。
「あ!ノエル!ここ飲食店だよ⁉他のお客さんに見られたらどーすんの!」と茉莉華は顔が真っ赤になっていた。まるで小さなイチゴみたいに。頬をぷくっと膨らませて怒っている茉莉華をみてノエルは笑っていた。

「わりぃ、わりぃ!茉莉華がつい可愛くてなw何てったって、俺の彼女だし☆これくらいいいだろ?w」
「もうっ!すぐ調子に乗るんだから!」
「はははwごめんって!w」と言ってお互い笑いあいながらパフェを食べた。その後も雑貨や服をみたり、ゲームセンターでクレーンゲームをやったり、プリクラを撮ったりした。茉莉華にとっては久々、ノエルにとっては初めてのプリクラだった。
「ノエル!カメラの方見て流行りのポーズしよう♡」
「お、おう!って、これカウントダウンあるのかよ!!」と容赦なくプリクラのアナウンスは「3・2・1」とカウントダウンを始めた。それに合わせて茉莉華とノエルもポーズを決める。
ーパシャッー!
<こんな風に撮れたよ♡>(プリクラのアナウンス)
「ノエル可愛いー♡」
「俺、可愛くなってるぅー⁉」
「今のプリクラは、まるで別人かのように盛るからね・・・。」と二人はプリクラ機の中で盛り上がりながら、プリクラの落書きブースに向かって、プリ写真に落書きをした。ノエルはプリクラに「恋人記念プリ♡」とペンで書いた。

プリクラで撮った後、もう気がついたらあっという間に夕方の16時になっていた。空はオレンジ色で夕日も出ていた。
「ん~!今日はめっちゃ最高なデートだったー!空もすっかり夕暮れだね。」
「そうだなぁ~。帰ってからはお互い宿題だな!勉強も。」と言って二人は夕日を見つめていた。茉莉華は切ない顔になって、ノエルの肩にちょこんと頭をのせた。
「・・・・。もう少し、ノエルと一緒にいたいなぁ・・・。」
「っ・・・!俺も・・・・。」二人はお互い顔が真っ赤になっていた。するとノエルが茉莉華に小さい声で呟いた。
「茉莉華・・・。俺の方向いてくれる・・・?」
「・・・?」と茉莉華はノエルの方を向いた。二人はお互い、胸の鼓動がドクンドクンと早くなっていた。ノエルは茉莉華に顔を近づけながら目を閉じ、唇に触れ、キスをした。二人が付き合って初めてのファーストキスだった。幸い、人気のない場所にいたため、見られることはなかった。

「さて、あまり遅くなると危ないから、バスに乗って帰りますか。」
「ああ。腹が減ったしな。夕飯たのしみだなぁ~。」
「ノエルったら食いしん坊だなぁ~w」とたわいもない話をしながら帰った。
ー家ー
ノエルや荷物を水族館のシャチの水槽のところまで送り、茉莉華は家に帰った。
「ただいまー!」とドアを開けると、叔母さんが笑顔で「おかえり」と茉莉華を抱きしめた。
「おかえり!茉莉華ちゃん!シャチのノエルとの初デートどうだった?」
「凄く楽しかったけど、ひ・み・つ♡」
「え~!教えてよ!茉莉華ちゃーん!」と叔母さんと夕飯を楽しくたべて、盛り上がった。
茉莉華にとってノエルとの初デートは最高の記念になった。
ー続くー
※挿絵の一部にクリップスタジオの素材を使っています。