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たくさんの子供たちの手紙を読み終え、一息をつく老人の姿がそこにあった。
ぐぐっと背伸びをして凝り固まった体をほぐす。
老人こと、サンタクロースはクリスマスシーズン以外はあまり忙しくはなく、こうしてのんびり過ごすのだ。
──シュワっとした飲み物が飲みたい。
ふと、そんな気持ちが沸き起こる。紅茶もいいが、今日はコーラの気分だと思い、
ウキウキとした気分で、冷蔵庫のドアを開けるが、そこにはコーラのペットボトルがなかったのである。
数日前、コーラを飲み切ったことを忘れていたことを思い出す。
「──……買い物でも行くとするかの」
──彼は、マフラーと帽子を手に取り外出の準備をする。
しっかりと防寒をしてドアノブに手をかけると、日本のどこにでもある住宅地が顔をのぞかせる。
──何故、日本の住宅地が目の前に広がっているのかとあなたは疑問に思うのだろう。
答えは、至極シンプルなものである。彼は日本を担当する『サンタクロースの一人』だっただけのことである。
『サンタクロース』一人では、プレゼントを配り切ることはさすがに厳しいのが現実である。
「三田さん、今日はお出かけかしら?」
『三田 蔵臼(みた くらうす)』日本ではそう名乗っている。
近所のおばあさんが、声をかけて来たので、にこやかに返事をする。
「ええ。天気がいいので、買い物に行こうかと思いまして……」
彼は軽く挨拶を済ませ、ゆったりとした足取りで歩き始めたのだった。