今回は、ポルトガルの民族歌謡音楽、「ファド」についてご紹介したいと思います。
・ファドとは?
イタリアのカンツォーネ、フランスのシャンソン、アルゼンチンのタンゴ、ブラジルのサンバのように、ポルトガルにはファドがあります。
意外にも歴史は新しく、19世紀にリスボンの下町で現れたのが始まりとされています。
レストランなどで演奏される大衆歌謡で、ポルトガルギターとクラシックギターなどで伴奏されます。
2011年には、ユネスコの人類の無形文化遺産の代表的な一覧表に記載されました。
・ポルトガル・ギターとは
ポルトガル・ギターは、12弦の弦楽器です。
起源については諸説ありますが、イングリッシュギターとシターンの融合から生まれたという説が有力のようです。
ポルトガルではこの楽器をギターハと呼び、一般的なクラシックギターをヴィオラと呼びます。
独特な丸みのある形をしていて、涙の形を表したものだと言われています。
弦を固定し巻き上げる「ヘッド」の部分も一般的なギターとは違う独特な形です。
12弦は、2本ずつ細弦と太弦が対になっており、二つの弦は同じ音かオクターブ違いの音になっている「リスボン調弦」というのがあり、その調弦でクラシック・ギターとの協奏で伴奏に用いられたり、三重奏や独奏、合奏でも使われます。基本的にはファドの伴奏用として定着していて、器楽曲の演奏が定着した歴史は浅いようです。

ここでまずは、ポルトガル・ギターの独奏をお聴きください。
とても美しい音色ですね。
・ファドの女王「アマリア・ロドリゲス」
ファドの女王として知られる、ポルトガルの女優で歌手のアマリア・ロドリゲス(Amalia Rodrigues)は、1920年に首都のリスボンで生まれました。
18歳の頃、一流ナイトクラブ「ファドの家」に出演し、反響を受けます。
その後、ファディストの中でも「ファドの家」と両極をなしていたミュージカルの分野でも活躍し、評価を得ました。
やがて、主演映画が作られるなど一般大衆にも人気を博し、カリスマとなっていきます。
当時、ポルトガルは独裁政権下にあり、国家的歌擁護されていました。
しかしその体制が崩壊すると、人々の心はファドから離れていきました。
カリスマとして注目を集めていたアマリアは、批判にさらされることもあったようです。
しかしやがて20年の時を経ると、EU参加の動きの中で自国文化再興の兆しが出てくることになり、若者を中心にファドの再評価されていき、アマリアの後継者と言えるようなファド歌手、ミージアや、ドゥルス・ポンテスなどが現れるようになりました。
1999年に死去した際は、ポルトガル国民は3日間喪に服し、2001年にはリスボンのサンタ・エングラシア教会に移送され、ヴァスコ・ダ・ラマ等とともに国民的英雄の一人として眠っています。

・まとめ
今回は、ポルトガルの民族音楽、ファドと、その演奏に不可欠な楽器、ポルトガルギターについて、そして、ファド歌手、アマリア・ロドリゲスについてご紹介しました。
最後にアマリア・ロドリゲスの歌唱を聴いて終わりにしたいと思います。